助太刀 ページ10
炭治郎は、地面に伏せっていた。
息が荒く、心臓の鼓動が異様なほど早い。
どんどん視界が狭まっていく。
耳鳴りもひどく、体中に激痛が走っていた。
伊之助を助けに行かなければ。
そう思った時。
悪寒が背中を走った。
後ろに、気配がある。
ぞわ、と体中に鳥肌が立つ。
血の匂いが濃くなったのだ。
「僕に勝ったと思ったの?」聞いたことのある少年の声が、背後から聞こえる。
「可哀そうに。哀れな妄想して幸せだった?僕は自分の意志で頸を斬ったんだよ。お前に頸を斬られるより先に」
鬼からは、怒りの匂いがした。
「もういい。お前も妹も殺してやる。こんなに腹が立ったのは久しぶりだよ。」
早く立て、と何度も自分を叱責するが、体はピクリとも動かない。
「不快だ。本当に不快だ。そもそも、なんでお前は燃えてないのかな。僕と、僕の糸だけ燃えたよね。妹の力なのか知らないけど苛々させてくれてどうもありがとう。
何の未練もなく、お前たちを刻めるよ。」
ギュル、と音がして、自分の体の周りが糸で囲まれたのが匂いで分かった。
腕が上がらない。
しかし、来る、と思っていた体の痛みはいつまでもやってくることはなかった。
パラ、と糸が斬れる音がする。
その後に聞こえたのは、抑揚のない、落ち着いた声。
「俺が来るまでよく堪えた。あとは任せろ。」
見覚えのある特徴的な羽織を着た青年――――富岡義勇は、そう言って炭治郎の前に現れた。
鬼からは、まだ怒りの匂いがする。
無数の糸が、義勇を襲う。
「全集中・水の呼吸 拾壱ノ型」
血の匂いに混ざって、澄んだ水の匂いがした。
「凪」
義勇の間合いに入った瞬間、無数にあった糸は一本も届くことなくハラハラと地面に落ちる。
もう一度、と糸を紡ごうとした時、
鬼の頸は、すでに斬られていた。
あの兄妹だけは殺さねば、と目を泳がせて兄妹の姿を探す。
見えたのは、妹を守るように覆いかぶさる兄の姿だった。
その瞬間、人間の頃のこと、
自分が欲しかったものを、唐突に思い出した。
思い浮かんだのは、自分が人間だった頃の本当の父と母の姿だった。
81人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時