決着 ページ49
ドクン、と心臓が早鐘を打つ。
その瞬間、重石が外れたように私の体は軽くなった。
心拍数がやけに多い。体は毒のせいか燃えるように熱い。だけど、
これで、動くことができる。
感覚が研ぎ澄まされているのが分かる。
音が一つ一つはっきりと聞こえた。
善逸の音。堕姫の音。宇髄さんの音。血鎌と刀の音。風の音。妓夫太郎と炭治郎の音。
妓夫太郎の首元の音に耳を澄ます。
妓夫太郎の頸は、炭治郎の刃を防ごうとギチギチと音を立てていた。
その中で一か所、
ミシ、と軋むような音を立てている場所があった。
体の方向をそちらに向けて、跳躍する準備を整える。
次に思い描くのはおじいちゃんの氷の音。
パキパキ、と冷気を放ちながら刀を氷が包んだ。
違う。この音じゃない。
まだ冷たくなれる。まだ、速くなれる。もっと、鋭くなれる。
その瞬間。キィン、と刀が”鳴った”
Aの研ぎ澄まされた感覚は、余す所無く鬼の頸を斬るためだけに使われていた。
軋んだ音がした方へ思い切り跳ぶ。
先程まで毒に侵されて動かなかった体は、自分の想像以上の速さで妓夫太郎の元へと動いてくれた。
その様子を、宇髄は呆然と見つめていた。
毒で動けないはずのAの体は、周りにパキパキと冷気を放ちながら鬼の頸を斬ろうと立ち上がっていた。
彼女の吐く息は白く、刀は物凄い勢いで凍り付いていく。
澄み切った高音が辺りに響いたかと思うと、Aの刀を纏っていた氷が突然消えた。
「氷の呼吸 漆ノ型」
彼女の口が、言葉を紡ぐ。
待て待て、氷の呼吸五つしかないんじゃなかったのか。
さっきの陸ノ型といい、ほんと無茶苦茶な奴だな。
「
鬼の頸に刃が届く。
鬼の頸から、氷が見えた。
妓夫太郎の頸は、Aの刀が触れている場所からバキバキと氷柱や霜を出しながら凍り付いていく。
なんだこれは。
呼吸によって、実際に炎だとか水だとかが見えることはある。
だけど、氷を見たからって凍るか?頸が?
どれだけ”濃い”氷を纏えばそんな風になるんだ。
とんでもねぇ奴、と宇髄はAを見て冷や汗を流した。
堕姫の元には伊之助も駆けつけ、善逸とともに頸を斬ろうとする。
妓夫太郎の頸は炭治郎とAの刃が今まさに頸を斬ろうとしていた。
四人分の、叫びが聞こえる。
鬼の頸を斬るために自身を鼓舞する叫びだ。
ザン、と言う音が二つ。
妓夫太郎と堕姫の頸は、四つの刃によって同時に斬り落とされた。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時