忍びの家系 ページ34
兄弟は九人いた。
十五になるまでで七人死んだ。
一族が衰退していくことを焦った親父は、取りつかれたように厳しい訓練を俺たちに強いた。
生き残ったのは、俺と二つ下の弟だけだった。
弟は、親父そっくりの人間だった。
部下は駒。妻は跡継ぎを生むためなら死んでもいい。本人の意思は尊重しない。
ひたすら無機質。
俺はあんな人間になりたくない。
そんな時、お館様に出会った。
お館様がはじめに言ったのは、「つらいね天元、君の選んだ道は」と俺を憐れむような言葉だった。
「自分を形成する幼少期に植え込まれた価値観を否定しながら戦いの場に身を置き続けることは苦しいことだ。様々な矛盾や葛藤を抱えながら君は、それでも前を向き戦ってくれるんだね。人の命を守るために。」
お館様は微笑んでいた。
「ありがとう、君は素晴らしい子だ。」
ある日、水柱の冨岡が俺のところに継子を連れてきた。
鬼になった妹弟を斬り捨てた少女だった。
性格は、ひたすらに真面目。言われた事はどんな無茶なことだろうと必ずやり通す。
どんな劣悪な環境でも必ず最適解を出す。
むしろ、逆境になればなるほど頭は静かになる。
俗に言う冷酷な奴。それがあいつだった。
生まれつき、そういうやつはいる。
ある意味、それは才能と言うのだろう。
だから俺は、俺の言われた通りのことを着実にこなすそいつが苦手だった。
弟の姿を見せつけられているようにすら感じた。
それが変わったのは、最終選別の後だ。
彼女は、鬼を斬るときに伍の型しか使えない。そう冨岡から聞いた時は耳を疑った。
なんでも、妹弟のことを思い出してしまってどうしても斬れないのだとか言っていた。
久しぶりにAに会うと、Aは突然涙を流した。
「宇髄さんに教えてもらったこと、できなくてごめんなさい。」
子どもみたいに泣きじゃくって、俺にそう言った。
いや、俺がつけてやった稽古は、速さを上げるための訓練と俺との実践稽古だけだし、お前はちゃんとできてただろうが。
そう言うと、宇髄さんが死ぬなって言ってくれたのに、それが出来なかった。
自分の命がなくなることよりも鬼が痛がる方が嫌なんだと、Aは話した。
とんだ甘い奴がいたもんだ、と思った。
妹と弟を斬り捨てたからって、他の鬼にまで情けをかけるか普通。
それでも、俺はそいつの在り方を好ましく思った。
「馬鹿だな、生きてりゃいいんだよ」
そいつと重ねていた弟の影は、いつの間にか消えていた。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時