密談 ページ20
煉獄の死から、数日後。
冨岡は産屋敷邸へと足を運んでいた。
「杏寿郎が亡くなったことは、知っているね。」
お館様は、開口一番に柱の一人である男の名を口にした。
「柱を一人、増やそうと思っている。」
お館様はまっすぐ俺の目を見て、一人の隊士の名を口にする。
俺の、想像通りの名だった。
「Aを氷柱として昇格させる。義勇、君は彼女についてどう思う?」
「………」
しばらく考え込んでから、結論を出した。
「俺は、反対です。」
煉獄さんの死から、四か月が経った。
私には何の変化もなく、ただ鬼を斬る日々が続いていた。
階級は、いつの間にか甲にまで上がっていた。
炭治郎たちは日に日に成長していく。
剣を握ってからまだ二年の炭治郎は、皆に後れを取るまいと一生懸命任務をこなしている。本当に頑張り屋さんだ。
昔は任務に行く度に泣いてばかりだった善逸も、単独での任務に着いても泣かなくなった。
伊之助は、前にも増してまっすぐな、強い音になっている。
炭治郎達の姿を見て、自分も稽古に向かおうとした時。
「離してください!!」
蝶屋敷の方角から、女の子の声が聞こえた。
「俺は反対です。」
お館様に反対の意見を述べるのは、これが初めてだった。
お館様は特に怒った様子も、驚いた様子もなくただ微笑んでいた。
「理由を聞いてもいいかな。」
「彼女は単独で十二鬼月を倒しました。しかし、彼女の氷の呼吸はまだ未完成です。そのせいで前回の戦いで重傷を負った。まだ柱にするには早すぎます。」
「確かに彼女の氷の呼吸は未完成だ。でもね、氷の呼吸とは痛みを感じさせずに葬ることで鬼を人に戻すものだと先代の氷柱は言っていた。先代が彼女に伝えたのもそれだけだ。」
お館様の言葉と、Aの姿が重なる。
「彼女ほどそれを体現している人はいない。義勇もそれは分かっているはずだ。」
今回は、義勇の意向を汲んで彼女の階級は甲とする。と、お館様は言った。
「失礼致します。」
席を立ち、産屋敷邸を後にしようとする。
「義勇」と呼ぶ声が聞こえて足を止めた。
「彼女は優しいけれど同時に強い子だ。義勇が可愛がるのも良く分かる。けれど、大切にしている子ほど、どんどん先に進んでいくんだよ。それを覚えておくといい。」
お館様の言葉に何も返せないまま、俺は屋敷を後にした。
「義勇がどれほど守っても、きっと彼女は柱になるんだろうね。」
お館様は、誰もいない屋敷でひっそりと呟いた。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時