冨岡さんの音 ページ15
冨岡さんからは、罪悪感の音がする。
昔、選別試験で親友を無くしたと言っていた。
私は冨岡さんが罪悪感を抱きながら生きる姿が、なんだかすごく悲しく見えた。
冨岡さんはあんなに強いのに、自己否定と苦悩の音が止まない。
それを無理矢理抑え込んで、水面のような静かな音を鳴らしている。
背負い込まなくていい分まで背負い込んでしまう。
私はそんな、不器用な冨岡さんが好きだった。
親友を自分のせいで亡くしてしまったことが罪であるなら、妹を斬った私はとんだ罪人だ。
それなのに冨岡さんは私といるときは酷く落ち着いた音がして、
心の奥底にある罪悪感の音が止んで、波が一定に揺れる、落ち着く音になる。
私といるときにそんな音を出すものだから、図々しく勘違いしそうになる。
冨岡さんは柱で、私は継子だ。
私より冨岡さんの方がずっと強いから、もし死ぬとしたら私が先だ。
もしも関係が深まってしまった場合、私が死んだら、冨岡さんは悲しむのだろう。
これ以上、あの人の罪悪感の音が増えるのは嫌だった。
突然、瞼が重くなった。
あ、もう、無理かも、と思った瞬間、足音と、水の音が聞こえた。
あ、だいぶ心拍が速くなってるなぁ、と思いながら安心して目を閉じようとした時。
ぼやけた瞳に、大好きな人の羽織が見えた気がした。
「A!!A!!」
肩を抱きあげて、名前を呼ぶ。
Aの瞳は閉じられていて、体も冷たくなっていた。
僅かに息がある。
安堵の息をつくと、「冨岡さん、急いで止血します、下がってください」という厳しい声が降ってきた。胡蝶の声だ。
素人目から見ても、Aの怪我は酷かった。
首から大量に出血している。
温かかった体は氷のように冷たくなっていて、顔も青白くなっていた。
胡蝶が手際よく薬を打ち込み、傷口を縫い合わせていく。
その様子を、俺はただ眺めていた。
烏によると、炭治郎と禰豆子は本部に連れ帰ることになったらしい。
隠が見つけてくれるだろう、と胡蝶は手を休めることなく言った。
処置を終えた胡蝶がAを運ばようと隠を呼ぼうとしたので、「俺が運ぶ」と申し出た。
そう言うと、胡蝶はふっと表情を和らげてから、「冨岡さんなら安心ですね。揺らさないよう、慎重に運んでください。」と真剣な表情で言った。
Aは、俺に背負われると、すぐにすぅすぅと寝息を立て始めた。
その様子に胸をなで下ろす。
冨岡の足は蝶屋敷へと向かっていた。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時