検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:4,698 hit

時透さんとお食事 ページ7

「時透さんは、何のご飯が好きなんですか?」

煉獄さんからお館様の指令ということを聞いた私は、時透さんと接触を図っていた。

時透さんには、記憶がない。

指令だとか、他の人の名前だとか。
そういうことをすぐに忘れてしまうのだと、誰かから聞いたことがあった。

だから、時透さんにはこちらから声をかけなければ、と思ったのだ。

しかし、いざ時透さんと会うと、どうやって説明すればいいか分からなくなる。

そこで、冒頭の言葉が唐突に口から飛び出たのである。

そんな突拍子もないことをいきなり聞くものだから、時透さんは首を傾げた。

理由は分からないけど私とご飯を食べろという指令が出ているらしい、と説明する。

時透さんは表情を変えずにそう、というと鎹烏に「今のって本当?」と尋ねた。

時透さんの烏は気に食わない、とでも言わんばかりにフン、と鼻を鳴らしながら、

「本当よ本当!」と刺々しい声で言った。気の強い子なのだろう。


それを聞いた時透さんは相変わらず無表情のまま、じゃあ行こうか。と歩き出す。

時透さんが足を運んだのは、甘味処だった。

笠のある赤い敷物が敷かれた長椅子に腰かけた時透さんは、「座れば」とそっけない口調で話す。


時透さんは、剣を握って二ヶ月で柱になったらしい。

時透さんの音は静かだ。

人は、心音以外にも何かしら音がしている。
例えば冨岡さんからは波の音がするし、善逸からは静電気みたいなパチパチした音がする。

時透さんには、それがない。

からっぽ、と言ったら聞こえは悪いかもしれないが、本当に聞こえないのだ。

時透さんはというと空をじーっと見つめている。

ずっと空を見上げて思考を巡らせている時透さんの姿は、少しだけ寂しそうに見えた。

特に何の会話もないまま、時は過ぎていく。



「あれ、何しようとしてたんだっけ。君、えっと、誰かの継子だよね?」

なんでここにいるか知ってる?

澄んだ瞳が、こちらを見つめる。

私は、「私にも、良く分からなくて。なんででしょうね。」と返答していた。

どうしてなのかは分からないけれど、ただ何となく、そう言うのが正しい気がした。

時透さんは、そう。と呟くと席を立ってその場を去ろうとする。

最後に、「君、名前は?」と尋ねられた。

水守Aです、と答えると、私の名前をぽつりと呟いて、

「今度会った時には覚えてないと思うけど、また名前を教えてね」

そう言った時透さんの表情は少しだけ和らいでいたように見えた。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している



←煉獄さんとお食事



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (16 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
18人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:kanna | 作成日時:2019年10月9日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。