天使は悪魔に堕ちる ページ5
迅雷side＿＿＿＿＿＿
「迅雷ー！！」
ハツラツとした印象を与える声で、僕に話し掛けてくる。
小学四年生の僕は、独りぼっち。人に話し掛けるのが苦手で、友達なんて居なかった。
「えっ、あっ、何？」
「キョドんなって！元気出せよ！」
バシッと僕の背中を叩いて来る少年。
彼は京極 昴流(きょうごく すばる)。僕の、唯一の友達。＿＿＿だった人。
「皆で遊ぼうぜ！！」
昴流が、僕の肩に手を回してくる。こんな友達らしい事をしてくれるのは、昴流だけだ。
「僕は遠慮しておくよ……。ほら、僕って鈍間だし…………」
僕は苦笑いを浮かべながらそう答えた。
「昴流ー！！」
遠くからは、昴流を呼ぶ他の男子の声が聞こえる。
「悪いー！今日は迅雷と遊ぶわー！！」
そう言って、その場を離れようとする僕に駆け寄ってきた。
「って訳で、オレと遊ぼうぜ！」
二カッと笑う昴流。
僕なんかと一緒に居たって、意味無いよ。
昴流みたいな明るい人間と居たら、僕は完全に、影になってしまいそうだ。
「迅雷ー？」
一向に返事をしない僕に、昴流はデコピンをしてきた。
「痛いなぁ…………」
そう言って額を抑える僕を見て、昴流はゲラゲラと笑う。……うーん。やっぱり少し、嫌な奴？
それでも僕にとっては、大事な友達だった。
あの事件が、起こるまでは＿＿＿＿＿＿
「＿＿＿昴流君？」
近くの寂れたコンビニで、昴流を見掛けた。
昴流はハッとして、僕の顔を見る。手には、鞄。其の中には＿＿＿＿＿＿大量のお菓子。
「昴流君？其れって若しかして＿＿＿＿＿＿」
「黙れっ！」
昴流が僕の言葉を遮る。ガサガサと音を立てて、お菓子が落ちる。
コンビニの店員は、店に居ない。此れじゃ、盗んでって言ってる様なもんだよ。
「ねぇ昴流君。どうしたの？」
「煩いっ！誰にも言うんじゃねぇ！！」
昴流は、僕の言葉を聞こうとしない。
盗みをしたら死刑。此の法律＿＿＿というか、憲法は、昴流も知ってる筈。なのに何で、盗みなんかしたの？
「あんまり騒いだら、警察に見付かっちゃうよ！」
「オレは悪くねぇんだよ！悪いのは此の世の中だ！！」
昴流は怒鳴り散らす。本当に警察に見付かっちゃう。
今は、警察が普通に其の辺をうろうろしてる。見付かるのも、時間の問題だ。
「おい！何をしている！」
言ってる傍から、警察が来た。
此の侭じゃ、昴流が捕まっちゃう。
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