ねこの観察をしてみました。

繋がり、そして種明かし ページ7

勿論俺のことだけじゃなくて、周りのこともだけど。
俺は歳を食って自我を抑制するようになるまで時間がかかったが、こいつの良くも悪くも周りが見え過ぎてしまうのは昔から変わらない。感受性が鋭く繊細な上に感情移入もしやすいから、付いた傷が治らないうちに更に傷付いてしまうところも。そしてその傷が他人よりもずっと治り難いところ。
……まあ、そこら辺が放って置けなくて、可愛くて誰にも渡したくなくて、そんでこいつを取っ捕まえて今に至る訳だが。


「ちゃんと、確認したくて。顔見て声聴きたいって思ったから…だから、声かけたの。」
「………ん？」
「っもう！一対一で"お疲れ様"って言いたかった理由っ！なにきいてたんだよっ。」
「イヤ何って…あー、繋がってたのね。理解したわ……。」

あー、やっと分かっ……

「……は？」
「……こんどはなに。」

え、じゃあ俺、アレか。俺は"俺に違和感を感じて心配してた藤ヶ谷"に違和感を覚えて心配して、あれこれと勘ぐってた訳か。二人揃ってとんだ空回りじゃねえか。
なんだ、なんだよそりゃ。

「…ふっ、くくく、は、」

何だか色々とバカらしくなった。一度漏れた笑い声はもう堪え切れず、挙句なかなかの大きさで笑い出した俺。ぽかんと眺めていた藤ヶ谷は次第にふるふると震え出し、俺の笑い声が収まる頃になって漸く、

「わ、笑わないって言ったのに…。」

しゃーねーじゃんか。
だってお前、思いっきり可愛いだもん。


「悪い悪い。色々バカらしくなってさあ。」
「ばかって……こっちは心配してたっつうのに……結局笑ったし、」

そういや俺「笑わない(様に頑張る)」って言ったんだったなぁと思い出す。頑張りの甲斐無しだな。

「……うそつきぃ。」
「ごめんって。」

妬ましげに見つめる拗ねた瞳。すっかりむくれて機嫌を損ねてしまった愛しいこいつに、早く種明かしをしてやらないと。


「あのな、藤ヶ谷。」

ぴくりと、呼ばれて反応を示す素直な体。

「……なに。」
「俺の体調面についてですが。」
「…ん。」



「疲労とクマは、深夜までネットサーフィンをしていたことによる寝不足が原因です。」
「は。」
「後、昨日誘惑に負けてラーメンをキメました。」
「へ。」
「偶然会えた大学ん時のダチと酒飲んでてさあ。」
「え、」
「あ、ちなみにラーメンは締めに一杯だけだから。」
「……。」

朝からずっと→←クマ

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