思い立ったが吉日 ページ19
染まる目尻を吊り上げ、不満げに組まれた腕とそっぽを向いた顔。あちゃー…そういや俺、ニヤついた顔のままだわ。いや、馬鹿にしてたんじゃないんだ。好きなもん見ると自然と頬が緩むじゃん? それだよそれ。
でもそれくらいこいつが分からない筈がない。分かった上で、こうして臍曲がりアピールをしているのだ。そういうちょっとした甘えに、俺が"振り回されてくれる"のをあいつは知ってる。
そして俺がご機嫌とりをするのを待ってんだ。
なかなかに面倒な奴だなぁ、と思う。
正直、他の奴だったら相手にしないだろう。
ただ、こいつなら。
馬鹿で可愛い。本当に。
"頼れ"
"甘えろ"
"寄りかかってこい"
そう口酸っぱく言ってきて、やっと気を許したと思ったら、コレだ。誰にでも言える様な何でもない我儘と、小さいが此方を試してくる様な駄々。俺にとっちゃあ、それさえ嬉しくないはずが無いんだ。その一つ一つが愛おしくて堪らないんだよ。
ああ本当に、馬鹿で、不器用で、面倒くさくて、可愛い。
この気まぐれツンデレ猫の皮を被った寂しがりな兎を飼い馴らすのに、俺がどれだけ――
「……」
どれだけ、、、
「…え?」
――猫?
零れた声に反応した藤ヶ谷がちらりとこちらを窺う。
「………あぁ!」
「えっ?」
「…なるほどな。」
いるじゃん、近くに"ねこ"。
いや、猫みたいな時もあれば犬みたいな時もあるし、食べ方は大分リスっぽいし本質的には兎だと思ってるけど。
こじつけなのは分かってるさ、でも今は――ネコでは無いが俺の身近にいる中でもなかなかに猫に近い存在。気ままで気まぐれ、ちゃんと見ていればころころと変わる表情、しなやかで曲線的な動きはまさに猫のそれだ。
「いったい、なにが、」
階数表示を見る。もう間もなく着きそうだ。
気付いたら即行動。ここは自他共に認める持ち前の行動力をフルに発揮する所ではなかろうか。うん、そうに違いない。
到着予定だった目的階の一つ上、その階のボタンを強く押した。
直前で階を変更させられたエレベーターはそれでもしっかりと止まる。到着を知らせる音。未だ戸惑うそいつの手首を引っ掴んで、その外へと連れ出した。
「いきなり何して…っ、」
直ぐに手を離せばその途端一定の距離を取られ、その顔に仮面を貼り付けようとする。だが、あてもなく彷徨う目と、回数を増す瞬き。冷静を装おうとも、その表情に動揺は隠し切れない。
その心が落ち着いてしまう前に、尋ねた。
「なあ、この後予定ある?」
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久呂之(元:緋絽)(プロフ) - 和來さん» ありがとうございます(*´˘`*) 改稿の可能性もありますがちゃんと完結させたいと思っております。応援の言葉、励みになります(´⊃ω⊂`) (2019年9月29日 2時) (レス) id: 20569f8db5 (このIDを非表示/違反報告)
和來(プロフ) - このお話大好きです!更新される度にウハウハ言って読んでます!更新頑張ってください! (2018年4月22日 21時) (レス) id: 8f5aa5cad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久呂之 | 作成日時:2018年2月12日 14時