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あふれだした ページ18

後頭部をブン殴られたかの様な衝撃に目を瞠る。


ふふ、と零れる様にはにかんで、照れくさそうに小さな手で口元を覆う。細い肩をすくめて、残るしなやかな腕で自らを抱き締めるその仕草。伏せた目。傾いた首は折れそうに華奢だ。


何よりその笑顔。


だって、その顔は。熱い夜を過ごした翌日、その日だけは昔の様にねぼすけになる不眠症のお前が、漸く安心しきって寝惚けるまま俺の手のひらに擦り寄ってくる様になったお前が、俺の「おはよう」という声に嬉しそうに瞳を蕩けさせて、そして――。……それを彷彿とさせる、そんなたぐいの、

――ああ、


「……。」

思考停止に陥り、ただただ藤ヶ谷を凝視することしかできなくなった俺の視線に、流石に気付いたのだろう。

「なあに、きたやま。」

くすぐったそうに目を細めて、小首を傾げる。

「も…なんなの、」

恥ずかしげにへにゃりと眉を下げて、ふいと顔を俯かせる。緩んだ頬はそのまま。

「…あー、えーと…。」

何と答えたら良いか。口を開いてもろくな言葉が出てこない気がする。
応えに詰まった俺がすることと言ったら、目の前のこいつを凝視し続ける位だ。


「…っ、そんな、見ないで…っ。」

「うわ可愛い。」
「へ、」
「あ。」


心の声が漏れてしまった。思わず。
いや、だって。自分で言うのもなんだがこのしつこい視線に、少し困ったようにゆらゆらと瞳を彷徨わせて、伏せる。仄かな羞恥に染まる頬。そんな見ないでって何。え、くそかわじゃね? んなの、見んなって言われようが見るしかねーだろが!
ぽかんとして、唖然とこちらを見る藤ヶ谷はさっきの俺の言葉を呑み込めていない。紛れもなく。っつーか多分、何かの間違いだと思い込んでその脳内で否定しにかかってるに違いない。まあ、俺もこうやって口を滑らせるつもりはなかったんだが。

「あー…ごめん。」
「は、ぇ。」
「本音が出た。」

一度滑り出すとさ、その後も滑りが良くなるよな、何事も。脳に浮かんだ言葉がそのまま外へ出て行く。

一拍置いて、ぼふんと音を立てるがごとく顔を赤く染めたこいつに、意図せず顔がにやけた。

「な、ちょ、ばっ、」
「声がデカいぜ?」
「っ…、」

俺の指摘にちらりとカメラを見やって、声を潜めつつ「ばっかじゃねーの!」と語気を荒げる。なかなか器用なこった。恐らく、こんな所で、とでも言いたいのだろう。分かってるさ。あまりの羞恥と驚きで、なんだか怒った様な反応をして見せるのも、それはそれで好ましく思う。

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久呂之(元:緋絽)(プロフ) - 和來さん» ありがとうございます(*´˘`*) 改稿の可能性もありますがちゃんと完結させたいと思っております。応援の言葉、励みになります(´⊃ω⊂`) (2019年9月29日 2時) (レス) id: 20569f8db5 (このIDを非表示/違反報告)
和來(プロフ) - このお話大好きです!更新される度にウハウハ言って読んでます!更新頑張ってください! (2018年4月22日 21時) (レス) id: 8f5aa5cad2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:久呂之 | 作成日時:2018年2月12日 14時

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