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 らしく ページ11

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「うん、呼吸も大分落ち着いてきたわね」

『良かった…カナエちゃん、朝早くからごめんなさい。ありがとうございます」

「いいのよぉ、いつでも呼んで。それにAの処置が適切だったから、私は大した事はしてないわ」


えらいえらい、と優しく頭を撫でられた。今日も今日とて花が舞うように可憐だ。


——そんな彼女の纏う雰囲気からか、ふとこぼれてしまった。



『…ありがとう、ございます。……こんな事くらいしか、できないから」


きょとん、という擬音が似合うまあるい藤色。

「あら、Aはとっても可愛くって賢い子よ? 何かあった?」


一度こぼれた言葉は取り消せない。
昨日から渦巻いていた心が溢れてくる。


『…本当にそんな事、なくて。

 昨日も、危うくその子に怪我させちゃうところだった。お館様から、直々に預かっているのに。 私が、未熟者で』



一部始終を話していたら段々と目頭が熱くなってきて、いよいよ惨めだ。

失敗の尻拭いも一人でできない。



「あらあら、それはびっくりしたわね。
 大丈夫よぉ、人間は怪我して生きる術を学ぶんだから」

『っでもぉ』

「よしよし、大丈夫。ちゃんと立派にやれてるわ。 包丁が飛んだのは確かにびっくりだったけど、お互いはじめてだったんだもの。
 Aなら、何だって大丈夫よ」


張り詰めていた心がほどけて、小さな子供みたいにわんわん泣いた







『あの…時透くんの看病で呼んだのに、私の世話までみてもらっちゃって……ほんとに…」


一度泣いて全て吐き出して、完全に正気に戻ってしまった…

(なにやってんだかもー!!)


人前で、あんなに声をあげてわんわんと……うぅ…
ひとりだったらきっとまた枕に顔をうずめて悶えているところだ。 顔から湯気が出そう。

でも、さっきまでのようにぐるぐるとした悩み方ではなくなっている。



「いーいのよぉ、そんなの! …Aはいつまでも、私の可愛い可愛い妹分だもの。
また気軽に頼ってちょうだい!」


最後にもう一度、さらりと髪を撫でられる。



『……ありがとう、カナエちゃん』

「うん。 Aなりに、しっかり考えて行動すれば、それはきっと伝わるわ。がんばりなさい。
じゃあ、そろそろ行くわね」


最後に、「ふたりで美味しいごはんが作れるようになったら、ぜひ私にもごちそうしてねー」っと残して、カナエちゃんは山をおりていった。

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作者名:しろクロ | 作成日時:2020年12月11日 17時

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