掃除婦の観察日記２

２人のユウタ 中編 ページ36

「そうか、それなら話は早いな」
部長は、僕が持ってきた組織図の１人を指差す。
「岩橋とチェンジする予定なのは、神宮寺。当面、私のサポートをしてもらいつつ、プロジェクトへの参加を打診する。ちなみに、彼の教育係で入社３年目の岸優太には国内事業部で岩橋の教育係も務めてもらうが……実は、岸も予定するメンバーの１人だ」
「じゃあ、僕と……その２人がチームになる、と？」
「もちろん、彼らの意向も無視できないが」
ど、どんな人達なんだろう。部長の目は確かだと思うし、そこは心配してないんだけど。
「まずは、顔合わせからだな」
「え、あ……はい」
「実は、そろそろ来る頃なんだが」
ち、ちょっと待って。心の準備がまだなのにぃ。
なんか、扉の向こう。影が見える。もう来てるの？
「失礼します。神宮寺です」
「どうぞ、入りなさい」
３回ノックの後。良く通る声に、部長が応じて。入って来た顔は、やっぱり見覚えがあった。でも、先輩の岸さんは……まだみたいで。
「このたび、1ヶ月の部署異動と伺っております。短い期間ですが、しっかり勉強させていただきたいと思いますのでご指導よろしくお願いいたします」
「まあ、そう固くならないで」
部長は、緊張気味の神宮寺に柔らかく笑いつつ。
「掛けなさい。ところで、岸はどうしたのかな？」
「前の仕事が押したとかで、少し遅れるそうです」
隣同士になった僕らを、交互に眺めた。
「では、先に進めようか。２人は入社式以来かな。と、言っても岩橋はすぐに別館での説明会だったし互いに話すのは初めてかもしれないね」
「おっしゃる通りです」
でも。部署異動するなら、今日は挨拶程度かな。なんて思ってたんだけど。やたら、視線を感じる。
「ですが、これまでの２ヶ月を互いに活かした方が他部署にも馴染みやすいのではないでしょうか？」
「そうだね。具体的には？」
部長が言うと、神宮寺は完全に僕の方を向いて。
「連絡先を、交換して情報を持ち合い相談したい。もちろん、流出してはいけないものは論外だけど」
「……それぞれの部署の特徴とか、そういうこと？」
聞き返した僕に、神宮寺は頷いたけど。なんか。
なんか、ひっかかるのは気のせい……なの、かな？

２人のユウタ 後編→←２人のユウタ 前編

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す