掃除婦の観察日記２

青は愛より出でて愛より青し 中編 ページ27

それから話は進んで。俺らは郊外雑居ビルのフロアひとつ借りて、スタートした。滝沢部長と、内勤さん何人か。営業は俺と、いわげん、神宮寺。後は、名古屋支社から異動してきた平野だけで。今日は、営業だけで集まって飯でもって話だったけど。
「良かった、玄樹も一緒だったんだな」
「うん、改めてよろしくね。紫耀」
「何だよ、知り合いだったのか？」
俺なんか、平野とはプロジェクト前には名前しか知らなくて。いわげん、そんな誰とでも喋ってない気がすんだけど。したら、顔に出てたみたいで。
「前にちょっと、ね」
「こっちに土地勘なくて困ってた時な」
おいおい、二人して目ぇ合わせて笑うなよ。それ神宮寺とやってるヤツじゃん……てか、下の名前まで知ってんのかよ。まあ、仲が良いのはアリけどさ。
「……なんか、寒くね？」
「え、岸くん風邪ひいた？」
「気を付けてくださいよ、リーダーなんだし」
いやいや、違ぇし。これは、アレだ。神宮寺だ。部長に同行してて、遅れてくるってたけど。
「ごめんね、待った？」
やっぱ、そうじゃん。個室に出した笑顔が怖え。
つうか、目が座ってんだよ。入ってきた時から平野ガン見なんだけど。なんか、ヤバくね？
「じゃ、みんな揃ったし。改めて乾杯しない？」
「だ、だよな！」
いわげん、グッジョブ！で、メニューを渡そうとしたら。神宮寺のヤツ、チラッと平野を見てさあ！
指ごと、メニュー受け取ってやがるし。
何やってんの、お前？
「どうしよっかな、玄樹は何飲んでんの？」
「えーっとね」
四人掛けの席で、いわげんの前に平野。隣に俺。
いつも神宮寺は隣だし、って思ってたからだけど。なんか、メニューを覗き込む顔。近くね？
「じゃ、俺も同じのにしようかな」
「えー、別のにしない？でね、一口ちょうだい？」「良いけど、玄樹のも味見させて」
あーあ、また始まったよ。今日は平野がいるし、俺だけ置いてかれちゃいねえけど……て、あれ？
「あの、岸くん」
テーブルの下、隣からつつかれてるし。
「どう、なんですか？アレ」
「同期だからさ、アイツら。いつものことだし？」
ま、今日は余計に近いかもだけど。
「玄樹、同期には誰でもあんな感じなんですか？」
「や、そこまでじゃねえかなあ」
て、ことは。本人が分かってるかは、ともかく。神宮寺だけ、いわげんの特別ってことになんのか？

青は愛より出でて愛より青し 後編→←青は愛より出でて愛より青し 前編

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す