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第1話 ページ2

目覚めても覚えていないのにひどく哀しい、夢を見る。上京してから格段に増えた、そんな浅い眠り。けれど、不思議なほど深く眠れる夜もあった。
「……起きて」
 心を揺るがす、優しい響きが呼んでいるのが分かった。では、どこへ?自分はどこへ何者として、戻れば良いのか。
「紫耀」
 差し伸べられる、白い手。いつも、いつの日も救ってくれるそれを引き寄せ……目を開けた。
「……おはよう、玄樹」
「ほら、起きて。マネージャーさん来ちゃう」
「やだ、もうちょっと」
 生暖かい布団へ抱き込んでの、わがままも。一緒に暮らせるようになったからこそ、だ。
「ダメだってば!」
 腕の中、もがく身体を押さえ込もうとして。
「……なんか、熱っぼくね?」
 気付いて、しまった。
「ちょっと、ね。でも、薬飲んだから大丈夫」
 ベッドから逃げて、歩く足取りがふわふわとおぼつかない。思わず後を追えば、そこはもうリビングで。そのまま生活スペースへと歩いていく玄樹を追いかければ。
「今日、ひさびさ6人の撮影だから。楽しみにしてたし気を付けるから良いでしょ……ねっ?」
 振り向きざま、小首を傾げて笑う小悪魔は。自分が、それに弱いことを知っている。そして自分もまた、こういう時の玄樹が強情なことを付き合いの長さで知っている。
「……辛くなったら、言えよ?」
「分かってるって」
 どうだか、という本心は隠した。もちろん、伝える相手は自分が良い。けれど、そうでなくても我慢されてしまうよりかはマシだ。二人で暮らしたいのを百歩譲って、メンバーでシェアハウスにした理由の一つはそこにある。
 ここしばらく、玄樹の体調は思わしくなく。けれど、検査はいつも異常なし。不定愁訴とか未病とかのレベルで、個人の仕事をセーブして様子を見ている状態だった。ただ、一人で具合が悪くなったら、と心配したのは本人より自分を含めた他のメンバーで。
 このシェアハウスは玄関からリビングへ直行した後、放射状に配置された各自の部屋か生活スペースへ行く間取りになっている。元は介護グループホーム用に作られたものらしく、探してきたのも、送迎効率とかいざという時の打ち合わせにロスがないとか、それらしい理由でマネージャーを説き伏せたのも、実は。
「ジンは起きてんの?」
 当然のように首を振る玄樹を挟んだ、寝起きの悪い親友だった。

 
 
 

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黒那智(プロフ) - ななみさん» こんばんは、ななみさん♪いつもコメントありがとうございます★完全新作ではなく、いずれ書くつもりだった番外的な続編になります。話数にもよりますが、以前のれんいわカテゴリーに載せる予定なので今少し(いつだよ)お待ちくださいませ。 (2020年10月4日 19時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 新作楽しみです!楽しみがある幸せ^_^黒那智さん、待っております。 (2020年10月4日 16時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - けいこさん» はじめまして、コメントありがとうございます(^_^)まだ書ききれてない部分もあって、ちょっと説明くさいパートが続いてますが、気長にお付き合いいただければ嬉しいです★また遊びに来てくださいね。 (2019年12月8日 3時) (レス) id: bd09ac7e96 (このIDを非表示/違反報告)
けいこ(プロフ) - この不思議なお話好きです。凄く作り込まれていて色々納得! (2019年12月8日 1時) (レス) id: 5ebf2863bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年9月22日 16時

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