月輪エンゲージ�� ページ45
長きに渡り、血溜まりは魅了の魔力と考えられてきた。無論、他者を従わせるのだから誤りではない。けれど、老臣は知っていた。暴走の一面ゆえ見逃されがちだが、本来それは相手の奥底に眠る願いを引き出すものであると。
「意識を重ねることです。レン様の、それに」
玄樹ならばできるはずだった。根拠は充分にある。レンと契約し、欠片を授けられていて。何より、無事であれと祈っている。けれどそればかりではない。恐らく、この２人は同質だ。
「…………っ」
ふわり、レンは温もりを感じた。自身の手に
感じるそれは、触れていないのにそばにある。沁みわたるように内に存在する、息吹。それが誰のものなのかなど、考えるまでもない。
【ここに、いるよ】
思念が聞こえた。響いた、という方が正しいかもしれない。１人ではなく、２人でもない。
意識のとても深い場所で、ただひとつだった。
「守りたいものは」
目の前の、父であって父でない先代に問う。
「そばに在りたい心は、どこを見てる？」
知っていた。統治者として、彼はショウの母を迎えた。天界との調和の為に存在を労った。魔界の均衡を支える目的で、魔族の名門であるカイトの母を城へ招いた。けれど、レンの母に得るものは魔王としては、何ひとつなく。
「還るべきは」
その責を終え、眠るなら。どうか心のまま。闇は、その魂を包みやがて訪れる未来を育む。
「道筋が見えるなら、それが」
貴方が貴方へ戻る形になるはず。自分と玄樹がそうであるように、と。レンの闇は柔らかく対峙していた先代王を包んでゆく。
「……なるほど、お前は闇を我が物にしたのか」
絶対的な魔力ではなく、奇をてらった手法も選ばず。ただ、あるがまま明ける日を待つよう促す……闇の真髄を以て。傷を負わせるでなく。
「ならば」
応えなければならない。三界との関わりを、次代へ託した先代王として。彼らの父として。ひとつであって、２人であることを。ふたつ、遺さなければ思いに応えられはしないだろう。
「受け止めるが良い」
その闇に魂ひとつを抱える余力があるなら。
「くっ………！」
けれど。レンの組み手から、それはあたかも砂が零れるようにすり抜けて。反射的に振り向いた、その先では。
「玄樹！？」
闇に包まれ、剣の形をした魂がその下腹部を貫いていたのだった。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
