月輪エンゲージ�� ページ44
兄弟の中にあって、最も攻撃性が高いのは金の瞳を持つカイトである。また、ショウが持つ血溜まりは炎にも例えられ、木偶に仕立てる諸刃であった。
反して、レンの闇は２人に比べ受動的であり自ら仕掛けることはない。その特性が、能力の低さゆえと誤解されてきたのは否めなかった。
「あの方は、闇そのものなのです」
静かに、老臣は言った。
「人の世では、親殺しは罪と聞きます。天界もそれに近い世情でございましょう。ですが魔界に於いては旧き力を超える名誉にございます」
レンは、ショウやカイトのように目に見える才を持たない。先代からすれば、最大級の親心なのだろう。けれど、と玄樹は思う。
「レンが望んだことじゃない」
初めて会った時からそうだった。大事なものを守るだけの力と、それが叶う程度に無事ならそれで良いと。そんな彼が兄弟に遜色ない名誉を欲しがったりするだろうか。逆ではないか。
「来ぬか。ならば、こちらから参るとしよう」
バチバチと、手に火花めいたものが高まる。
と、前に出ていたレンの声が呪となり響いた。
「闇の気よ、魔道の雷を取り込め！」
先代から放たれた魔力で、闇がひび割れる。だが、レン自身にも周囲にもダメージはない。文字通り、闇が砦となって防いでいるようだ。
「闇そのものを悪しきものと考え忌み嫌うのは如何なものかと。闇は、ただ訪れ傍に在り包み込むだけ。弱き者を匿い、傷付き疲れた者には休息を誘い、時を味方にさせる。それこそが、闇の本質でございますものを」
淡々とした声が耳を打つ。天界に於いても、万物の成長や行動を阻むものとして闇は捉えられてきた。人の世ほどではないにしても、だ。けれど、それは傲慢さの裏返しでもあって。
「見えないから、恐れる。自分の中に在る良くないものを封じて勝手に作り上げた姿こそが、悪しきものになる……それを闇、だと考えて……」
「玄樹様は、誠に聡くていらっしゃいますな」
眼前では、先代の雷が幾度も闇を割っている。それはレンの防戦一方に見え、思わず震える指を合わせた。と、薬指から熱が伝わってくる。
かつて受け取った、闇の欠片……レンの一部だ。
「玄樹様ならば、助けられるかもしれません」
「本当ですか？」
「では、私の誘いに乗って頂けますかな」
反射的に見上げた玄樹に、老いた血溜まりが怪しく煌めいた。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
