月輪エンゲージ�� ページ43
「なんか、不公平じゃない？」
右から、突風が吹いた。ただの風ではない。証拠に側近達は床に落ち動かず、声の主であるカイトの手には赤い塊が２つおさまっていて。
「どうせなら命のやり取り、手駒なんかに邪魔されずに直接見たいよね。ショウもそう思うでしょ？」
「まあな。お前、だから烏の屍で試したのか」
血溜まりは、相手の血に作用する。即ち血流の途絶えた屍は有効な駒に成り得ない。それをあの烏で試したのだろう。恐らくは、この展開を見越して。
「２人の時間は止めたよ。でも、早く戻さないと腐っちゃうからね、これ。長くは持たない」
カイトが宙に遊ばせるそれは、鼓動だった。一時的に血の巡りを断つための、それは覚悟を促すものに他ならない。加えて、その傍では。
「……何ゆえか。自由が効かぬ……」
苦しげな呟きを待たず、従者が立ち上がる。ゆらり、カイトから離れる顔に表情は乏しい。
「な、何をしておる！まだ儀式は終わらぬぞ」
「御方様……この上、ここにいてはなりませぬ」
「そうだね。親父殿の血溜まりに影響されないのは、王家の血か闇の加護だけだから。でも」
広間の扉が、僅かに開く。けれど、そこから見えるのは城内ではなく歪んだ空間ばかりだ。
「王族同士の力って、想像以上だからさ。ここだけ、城本体から切り離されてるんだよね」
「無理にお出になられては、何処へ飛ばされるやら知れず。しかし、耐性もございますまい」
老臣は言った。先代の駒としてレンと戦え、との遠回しな皮肉である。けれど。
「無礼な！妾は、何者にも膝など折らぬ！」
魔界に於いて、名門と謳われた矜持ゆえに。
「左様な真似をするくらいならば、進んで藻屑と消えようぞ……さらばじゃ、我が子よ」
その、刹那。カイトの瞳に浮かんだ翳りを、レンは見逃さなかった。そして。
「茶番は終わりや！」
ドン、と広間を揺るがすような衝撃と共に闇が満ちた。その只中にあって夜目が効くのは、カイトの言葉通りであって。
「ショウ様！？」
「騒ぐな、ここにいる」
状況を飲み込めないでいる部下に、続けて。
「やっと、本気になったな」
闇は、血溜まりを鎮静化する。広間に満ちた闇は、カイトの心を救っただろう。母親と従者２人への影響を阻害する形で。
「守るものがないとアイツは力を解放しない」
昔からそうだった、と。目を細めて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
