月輪エンゲージ�� ページ42
「皆、知っての通り時間軸の異なる世界は数多ある。ここ、魔界に影響を及ぼすほどとなると天界、人界に限られるがな」
と、先代王は息子達を一瞥して続けた。
「ショウは天界、レンは人界、カイトは魔界。それぞれに根を持ち、強く干渉し得る。無論、逆も然り。それぞれに魔王の名を与えたのは、その為である。一見すれば、魔界を割ったかに思えるやもしれんがな」
三人の息子達は、父の意図を理解している。また、ショウの傍らに控える仮面の男もレンに付き従う老臣も黙し、初めて聞く玄樹は静かに成り行きを見守っていた。反して焦れているのはカイトの両脇である。先ほど発言を遮られたばかりか、敵視するショウや卑下しているレンと同等に扱われるのが耐えがたい様子だった。
「我が眼の一方はショウに受け継がれ、他方はカイトに現れた。魔族にとって眼は力の象徴。故に２人には我が血滴の杯を与えた……つまり」
レンは顔を上げ、その漆黒の瞳で父を見た。
そして、先代王は立ち上がる。次いで、儀式を取り仕切っていた側近達がぎこちなく動いた。
「この魔界に於いて我が身を屠るに足る者は、ただ一人……異なる力を持つお前だけだ、レン」
静かな声色である。だが、空気は変わった。
けれど、やはり立場が違えば温度差はあって。
向かって左、ショウの傍では仮面の男が聞く。
「そうなのですか？」
「見ていれば分かる」
不安げに見上げた玄樹の手には、レンのそれが重ねられ声もなく動く唇を横顔から窺えた。
【大丈夫やから】
そして、右からはややあって嘲笑が漏れた。
「ほほ、何のお戯れでございましょう。半分は人の子、眼はいずれも無力な黒にございます。先代を屠るなど、叶うはずもない絵空事かと」
「僭越ながら、私も御方様と同じく……或いは、カイト様の儀式に添える余興でございますか」
「真実の何たるかを見極められぬ、か。では」
と。先代王の、血溜まりが見開かれた。
「抗う術を持たぬ者達よ、我が駒となれ！」
ずるり、側近達が顔を上げた。表情がない。側近である以上、それ相応の高位ではあるのだろうが王の血溜まりには、やはり木偶である。
「……どうして」
玄樹は首を振った。きっと望んだものでは、ない。なのに何故、レンは先代王の言葉を否定しないのか。木偶は今にも近付いてくるのに。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
