漆黒の月 番外編�� ページ30
「正直なところ、品揃えは今ひとつでしたが」
抱えていた袋の、大きな方をまず手渡して。
「職人に採寸もさせましたので、いずれ新たなものも仕上がります。そちらは森の種族が好むシンプルな仕上がりにございますゆえ」
【うん、ゆるっと着れたぞ】
その言葉通り、彼らが生きる場所での作業に適した実用的な作りの衣服が出てくる。装飾はほとんどないが、身体の線もあらわにしない。
「ホントだ。ゆったりしてますね」
「ですが、正装ではありませんのでこちらも」
と、小さな袋を手渡してくる。
【インキュバスのは、着てる意味がないくらいデカくてさぁ。サキュバスのにしたんだけど】
「私の主観ではございますが、インキュバスのものはお似合いにならないように感じまして」
「……おい、まさか正装とかゆうんは」
恐る恐る、レンが言う。
「通常、婬魔が身に付けるものでございます」
「いや、待て待て。開けたらアカン」
【だよな〜、せっかくだし夜にとっとけよ？】
【ナニ？暗イ所デ光ル？】
【後で教えてやるよ。黙っとけって】
なんとなく。中身にも、察しがついて。
「あの。どうして分かったか教えてください」
「今朝、猫が匂いを嗅ぎ取りました。昨晩の、月の色からしても羽根のことからしても変化は御身の内側にまで及んでおられるのでは、と」
【だから、烏も気が付いたんだろ？血の匂い】
「そう……です」
確かに、身体は変わっている。
「とは言え、生粋の魔族ではございませんし。むしろ、昨夜生まれ変わられた次第ですから。以前、御母堂が仰った通り赤子の頃に見る証が現れたのでしょう……湯浴みなさいますか？」
「いえ、こちらで清めます」
「承知いたしました、用意させましょう」
老臣は言い、ふと気付いたように続ける。
「持ち帰りましたのは、あくまで既存の品ゆえご参考までに。個人差やお好みもあるかと存じますので、お二人でご相談なさいませ」
【相談って夜するヤツじゃねえの？】
「お前は、デリカシーという言葉を覚えるべきですね。では、私どもはこれで失礼致します」
彼らが消えた後の部屋で。『正装』という名の手土産の露出ぶりを目の当たりにして、玄樹は頭を抱え。レンは『血の匂い』の意味を正確に知ることになったのだった。
FIN.
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
