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第18話 ページ19

魔族の多くは派手な魔力を行使し、致命傷さえ時に楽しむ。治癒の力を持たないからなのかそうした本質が治癒を必要としなかったのか、魔力に特化した多くと、血溜まりの精鋭が魔界の勢力を二分してきた。
 対して、血溜まり以上に少数しか生まれない闇の力は魔界では軽視されてきた。人界に起因するという通説もさることながら、成長も遅く攻撃力が低いのも理由の一つだ。故に、本来の力を知る者は限られていて。現に魔王になった今でも、レンの評価は高くない。
「……まだ、足りてない」
 城内に入り、開く拳。カイトが成人するまであと少し、の今でも充分に満ちてはいない闇。
血溜まりと、魔力の力が均衡する時。あるいはそのバランスが極端に崩れる時。真価が現れるのが闇の根本だ。仮に、間に合わなかったら。
「レン様」
 音もなく、老臣が控えていた。
「お客人のお部屋は、如何されますか」
 レンは言葉に詰まった。その問いは額面通りではない。戻す心算があるのか、ないのかと。そう、尋ねているからだ。
「……部屋数は足りてるやろ」
「左様にございますね」
 共に過ごしたのは僅かなのに、全てに於いて良い結果を生む答に心が納得していない。カイトに問われるまでもなく統治者の顔と、生身の自分は乖離している。
「御母堂がいらした時を、思い出します」
 中庭に眠る過去を、今ある現実のように。
「先代は、統治者として父親として……御母堂の扱いに迷っておられた。ショウ様の今後を思い次の子を成す道具にするのか、それを御自身に問い続けて……今、レン様がおられるのですよ」
「親父殿から、聞いたんか」
「いえ。お客人と過ごしておられるレン様が、あまりに昔のままに思え愚考しておりました」
 恐らく、正解はあってないものなのだろう。
「悪いな。もうちょっと、一人にしてくれ」
 頭を下げる老臣を置いて、その足先は召喚に使った魔法陣に向かう。ほんの、二日前なのに随分前にも思える。不完全な姿は、今頃はもう契約を経て別人のように変わったのだろうか……ショウの、腕の中で。
「アホやなあ」
 内側が壊れていく。胸の、とても深い場所がここにはない重みを欲しがって悲鳴を上げて。
【……レン】
「重症やな」
 背を向けた魔法陣から声がするなんて、と。振り向いた瞳が捉えたのは。
「玄樹!?」
 寸分違わぬ姿で、漂う不確かな残像だった。
 

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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話+後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます! (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問&コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年5月1日 12時

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