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第1話 ページ2

呼びかけに応える命が、在る。
 城の玉座近く、しつらえた魔法陣に輪郭が現れた。それは、人の形をしている。少なくとも外見的には、強力な魔獣などではない。
「いかがなさいますか」
 傍らの重臣が問うた。
「続ける」
 若き王に躊躇はなかった。重臣の提案が期待外れの可能性が高いから、とは承知している。
そもそも、この召喚は戦力を補う目的だった。その点では脆弱な生物を召喚する必要はない。
「承知、いたしました」
 しかし、重臣もまた動じなかった。若き日の記憶がそうさせたのかもしれない。彼は、先代魔王に仕えた後に新たな主人として第二皇子を選んだ。先代に長く仕えた者ほど、同じ選択をした。愚か者と嘲笑する魔族もいた……けれど。
「……これは」
 輪郭が明確になる。やはり、人に近い。だが人ではない。召喚の衝撃もあってか、混濁した意識の中で半開きになった瞳は薄赤い、人外。しかも、碧眼ではない。
 魔族ならば左右どちらかの瞳に特有の金か、あるいは血溜まりの赤を持つ碧眼になる。双眼に金や赤が現れるのは、強い力の現れとされていて。同じ色が双方に現れるのは更に稀なことだった。事実、先代は金と赤の碧眼である。
「珍しいこともあるもんやな」
 魔法陣を凝視していた、王が呟いた。先代の血を引く、第二皇子である。しかし、彼の瞳は漆黒であり、魔族の力の証とされる色はない。
「色は薄いけど、血溜まりの力があるんやな」
 赤は見る者を取り込み従わせる力に特化し、
金は魔族の特性ゆえ魔力に特化するとされる。
「では、婬魔の一種でしょうか」
「羽根はないけどな」
 男性体のインキュバスの精悍さは欠け、女性体のサキュバスほど、まろやかな曲線もない。
かと言って、成長途上の子供でもない。総じて不完全と言うしかなかった。
 ふわり、と。それは魔法陣に落ちてくる。
「……天界の匂い、やな」
 魔族にとって、天界の空気は毒。天界と魔界は相反するため、逆も然り。であれば、なぜ。
「魔族であれば、天界に長く留まれないはず。ですが、その気配がするのですね?」
 何らかの理由で作り替えられた、ような命。
「大事にしたらんとアカンな」
「また、揶揄されましょうに」
 重臣は苦笑した。
「先代と、同じことしとるだけやで?」
 それが、人ではないというだけだと。若き王レンは、笑った。
 
 

 
 
 

第2話→←プロローグ〜水晶〜



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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話+後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます! (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問&コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年5月1日 12時

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