闇の腕(かいな)

プロローグ〜水晶〜 ページ1

お客人、ようこそおいでになられた。
　我が名は、心界。占いの真似事で永らえておりまする。この婆の元に見えられしは、いずれ探し物をされる方々。なに、探し物は形あると限りませぬ。
　世は、人のものだけではございませぬ。ご存知か？世界は他にあり、少なからず呼応するのですぞ。その数は、いかにこの心界とも存じてはおりませぬ。しかしながら、その最たるものは３つ。一つは、今在る人界。後の二つは天界そして魔界と呼ばれるもの。
　探し物を見つけに行かれるか？ふふ、案じることもありますまい。御身はこちらのままに、御心が旅立たれるだけのこと。天界にしろ魔界にしろ、人界とは時の流れも違いまする。
　決心なさいましたかな？天界と魔界、どちらを旅されるおつもりですかな……ふむ、魔界に?
ほほ、魔界は楽しめますぞ。何しろ、かの魔王が息子達に領土を分割して代替わりさせる心算のようでしてな。そう、ご子息は三人おられて特性豊か、魔族の意見も割れているご様子で。
　どなたの城に辿り着くかは、時の運ですが。行かれるか？では、こちらの水晶をご覧あれ。この中に、魔界の姿が垣間見えてまいります。ふむ……黒霧……なるほど、他の世界に干渉なさるのは第二皇子のようでございます。かの方は、他の兄弟よりも人に近い。理由は……今申しては興が削がれるというもの。
　では、お気持ちのご準備を。探し物が見付かりますように……どうぞ、良き心の旅を。

第１話→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す