月輪エンゲージ�� ページ36
天界の禊とは、聖水で身を清めることだった。人の世界でも神事では同様であるらしい。だが魔界の禊は、勝手が違うようである。
「まあね。あの人の腰巾着が余計なことしてたから、同じ目に遭わせてやったの。低能でも、血筋だけは良いからね。禊の血にはなったよ」
「ほう。御母堂は何もおっしゃらないので？」
と、カイトは顔をしかめた。
「あんなの、母親じゃないから。だって息子に色目使うとか、選民意識も大概にしろっての」
「優れたご子孫を残したいのでしょうね」
呪われた血を、老臣はサラリと受け流して。
「ところで、本日は如何なるご用件でしょう」
「ああ、それ！レンと話したくて玉座前まで、直通のつもりだったんだけどさ。出れなくて」
「我が主はただいま執務中にございます」
遠慮しろ、との言外の拒絶である。だが。
「少しくらいなら待つけどさ。なんか、結界が強くなってない？レンの気配を追っかけてたらここしか歪められそうになくてさ。しかも何か窮屈だし？浮いてるだけで出れないし？」
「ご自身が日々、魔王に近付いておられるからですよ。おめでとうございます、と申し上げておきましょう」
通常、魔王は複数存在しない。一時的に有り得てもそれは争いの最中なので、行き来などは論外である。実際、既に成人している第一皇子とは儀式でもない限り顔を合わせてはいない。
「えー、つまんない。俺、レンともショウとも別に争うつもりないし。お忍びだよ、これも」
「……レンの気配、って……これ……？」
控えめに、玄樹は手を上げた。その指には、彼が作った闇の一部が輪になり留まっている。
「あ、それそれ♪人間界で言う指輪ってヤツ」
左の、薬指。それは心臓に繋がっているからだと。命の源、そのものを守ろうとして。
「大事にしなよね、俺が言うのも変だけどさ。例の儀式、来てくれるならなおさらにね」
と。カイトは、食えない老臣を見る。
「たぶん、なかなかの余興があるはずだしね」
「主役であるカイト様がおっしゃるなら、さぞ見応えある趣向でしょうな。私風情がその場に居合わせるとは、身に余る光栄にございます」
「……そ？じゃ、当日よろしくって伝えといて」
用は済んだ、とばかりに歪みは消えてゆく。魔力が、カイトの本来いる場所に戻ることで。
【まったく。狐と、狸かよ】
猫の嫌味は、結局誰の耳にも届かなかった。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
