猿原真一とそもそもの出会い��* ページ10
最寄り駅に着き、改札を抜ける前にコンビニで飲み物を1本調達する。猿原さんのことだし、今日も何も持ってこないで待ってるに違いない。こんなに蒸し暑いのだから水分だけでも持って来てほしい。私のせいで倒れられたら後味悪いし申し訳ないし。
改札を出るともう日も暮れかけていた。雲の間から見え隠れする日の光はまるで午後ティーのようだった。私の分も買えばよかったかも。
それはさておき。電車の中とは違い、外は蒸し暑くこれから帰るのが憂鬱になるくらい湿度が高いように感じた。一人だったら楽しくはなかっただろうけど、今は違う。
「なまえ さん」
言った通り、猿原さんは私を見つけれくれた。猿原さんと帰る日はこれまでが嘘のように楽しいのだ。教授と呼ばれるだけあって博識で話が上手い。
ただ、この関係は事が解決したら終わってしまう。解決するのは良いことだけど、猿原さんと理由無く話す機会が無くなってしまうのは少し寂しい。
「猿原さん、こんばんは」
「……おかえり。今日はいつもより早いね」
「1本早い電車に乗れたんですよ。そうそう、アイスコーヒー買ってきたんでどうぞ。暑かったでしょう？」
「ありがとう。頂くよ」
心做しか猿原さんの元気が無いように感じた。もしかして、猿原さんも同じ風に思ってるのかな。なんて、そんな事ないか。猿原さんは俳句の方が好きに決まってるよ。
満杯まで入っていたアイスコーヒーが減っていく。一気にぐびっと飲み干す姿は見ていてほれぼれする。
一息つくと猿原さんはチューリップハットを深く被り直し、ぎろりと視線をどこか遠くに向けた。私の手を握り、まるでその目は決して振り向くなと言っているようだった。見ざる聞かざる言わざる。三猿に私はならなくてはならなかった。
「私から目を逸らしてはいけないよ、いいね」
いつにもなく真剣な目に私は事を理解するしか無かった。何が起こるか分からない。もしかしたらもっと大事に？ 直接接触してこようとしてきたら？
思考は悪い方へと転がっていく。私はただ家に帰りたいだけなのに。
「大丈夫だ。大丈夫だよ。私がついている」
「猿原さん……」
「とりあえず一昨日通ったルートで帰ろう。帰り道の選択肢を複数にしておいてよかったな」
自然と手に籠る力が強まっていく。猿原さんはそれに応えるように握り返してくれた。
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伊万里(プロフ) - カテゴリーＪ♢桜もち。さん» コメントありがとうございます🙇♀️そう言っていただけてとても嬉しいです！大変励みになります！まだ始めたところなので何もございませんが、また見ていただけると嬉しいです！ (2022年8月1日 0時) (
レス) id: 8155f27608 (このIDを非表示/違反報告)
カテゴリーＪ♢桜もち。 - はじめまして！！読ませて頂きました✨凄く面白かったので、また更新楽しみにしてます！更新お疲れ様です、応援してます！！ (2022年7月31日 17時) (レス) @page3 id: 1f8c7328a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊万里 | 作成日時：2022年7月31日 17時
