猿原真一と怪異��* ページ36
「なまえ っ！」
「真一、さん？」
「くそ。充てられたか」
あたたかい。誰かに包まれるぬくもり。目を開くと心配そうに覗き込む真一さんがいた。そんな顔、あなたには似合わないのに。
「なにが、起こってるの？」
「意識はあるようだな。そのままだ。しっかり気を保つように。ほら、深呼吸して」
回らない頭を精一杯使って体いっぱいに酸素を巡らせようとするが、何かが邪魔して上手くできない。このままじゃ、私は、私は。
「大丈夫だよ。大丈夫。私がついている」
「はぁ…っ、あ…っ」
「……そうだよ。吸って」
苦しい。邪魔しないで。私はただ、ここにいただけなのに。どうして。あの人の真似をしないで。
「ゆっくり吐くんだ。そう、そうだよ」
ぎゅっと真一さんが力を込めたのがわかった。目元を覆ってくれた真一さんの手がやけに大きく感じた。
(こわがらないで そと そと あけて)
「聞いてはいけないよ」
「でも…っ、そんなことは」
「……分かっている。そうだ。ここは空想の力の出番かな」
空想の力。それは真一さんが時折口にする言葉。呪文とも言うべきか、空想は不思議な力を持っている、らしい。私はまだ見たことはないけれど。
「想像して。ここには私となまえ しかいない。君が持ってきた菓子を二人で口にする。それ以上でもそれ以下でもないよ」
「…さっきと、かわんないじゃん」
「変わらない日常が大切なんだよ。さあ続けて」
それと話してはいけないと分かっているのに、その声は語りかけてくるように心臓に絡みついてくる。頭では理解しているのに、意識すればするほど真一さんの声に聞こえるから本当に気持ち悪い。
だけど、真一さんと言う通り「いつもの私たち」を空想すると幾分か悪い気がはらわれたような気がした。しかし、それは続けざまに近づこうとしているのが分かった。
「去らないな。普段ならもう消えているはずなのに」
「いつも、いるんですか」
「まあね。気に入ってしまったようだ」
こんなに寒いのに汗なんかかいちゃって。真一さんの汗を拭おうと彼の額に手を伸ばそうとしたが、またしても捕まえられてしまった。
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伊万里(プロフ) - カテゴリーＪ♢桜もち。さん» コメントありがとうございます🙇♀️そう言っていただけてとても嬉しいです！大変励みになります！まだ始めたところなので何もございませんが、また見ていただけると嬉しいです！ (2022年8月1日 0時) (
レス) id: 8155f27608 (このIDを非表示/違反報告)
カテゴリーＪ♢桜もち。 - はじめまして！！読ませて頂きました✨凄く面白かったので、また更新楽しみにしてます！更新お疲れ様です、応援してます！！ (2022年7月31日 17時) (レス) @page3 id: 1f8c7328a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊万里 | 作成日時：2022年7月31日 17時
