Ⅰ.秘密の７人目【東海オンエア】 (ページ34)

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No--side

「どした？」

バタバタと隣の部屋に走っていったAと入れ替わりに入ってきた虫眼鏡。

不審げに片眉をつり上げた彼は、呆然としているしばゆーと、スマホを右手強く握って下唇を噛みしめるりょうとを交互に見つめた。

「Aちゃん泣いてたげ？」

えっ、と呟いてしばゆーは目を見開かせる。直ぐ様移動しようとした彼を止めたのは、りょうだった。

「駄目だよ。お前が行っても意味ないし。」

「なんで？例えりょうくんにでもそれは分かんないじゃん。」

「分かるよ。お前だって感じてんだろ、帰国してからAの態度が違うって。」

しばゆーの腕を掴んだまま、りょうは淡々と言い放つ。それを聞いた途端、再び刮目したしばゆーは身体の力が抜けたかのように床に座り込んだ。

「…りょうくん何か聞いてるの？」
「…何も。」

「ざわくんは？てつやは？
さっき家と車見に行ったときなんか言ってた？」

「何も、聞いてないよ。」

唇の薄皮を無意識下で剥きながら、しばゆーは弱々しい声でメンバーの名前を上げていく。

しばゆーにとって、帰国後のAの態度が余所余所しいことは悩みの種だった。

りょうにハッキリと告げられたことで、それは気のせいでもなんでもないのだと確信してしまった。

期待した返事が返ってこないことは承知の上だった。何か聞いていたとしても、口を割るはずがない。

それでも彼は聞かざるを得なかった。

Aにとってしばゆーが唯一無二の幼馴染であるのと同様に、しばゆーにとってもAは誰とも比べることのできない大切な幼馴染だったから。

としみつとゆめまるの二人がインターフォンを鳴らすまで、異様な沈黙がその場を支配していた。