Ⅰ.秘密の７人目【東海オンエア】 (ページ18)

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「ねぇ、なんで結婚したの？」

増田や出っ歯も途中で拾ってやってきた店で、お帰りパーティーとは名目の飲み会。

宴もたけなわ時に、俺と、運転手じゃんけんに負け、止むなく受け入れた虫さん以外は皆、酔っていた。(その度合いはそれぞれだったが。)

俺の横に座るAは、頬を染めもせず然し眸にほんのりと色をのせて真正面に座るしばゆーだけに口を開く。

「…できたからだよ。」

酒に弱いしばゆーは、顔を真っ赤にさせながらも、彼女の問いかけにいつになく真剣に答えた。相変わらず眸は揺らいでいる。

「なんでそんなことすんの。」

思い切りため息をつくAは、酒のせいか舌っ足らずだし、軽いノリを装っているが、酒の入っていない俺から見るとその様子は真剣そのもので。

震える肩を誤魔化すように笑った顔は、車内のものに比べるとずっと歪で、しばゆーも唇を噛み締めていた。

「ごめん…言い方悪かった。

でも、ゆうちゃん。私は、Aはさ、結構本気で信じてたじゃんね。」

そんな子供、可愛いなんて思えんに。という呟きは本当に小さすぎてきっと隣の俺にしか聞こえなかっただろう。

Aは、ジョッキに残った生ビールを一気に流し込んだ。

再び、ごめん、と謝ったしばゆーが俯く様は、彼女がほしいものではない。

整えられた眉が、昔のように垂れ下がっていて、見ているこちらも胸を締め付けられるものだった。

「結婚式にも呼ばんしさ、ふざけてんの？」

「それは！まだ結婚式はやってなくって、」

慌てて顔を上げたしばゆーに、目を丸くさせたのはAの方で。

パチパチと大きな眸を瞠目させて彼女は、呆れたように息を漏らした。

「…そんな困った顔させたいんじゃないんよ。

まぁ、させてんのは私じゃんね。」

真向かいに座るしばゆーの黒髪に手を伸ばすAの狂おしいほど切ない微笑みが、彼女のすべてを物語っていた。

「Aちゃんっ、」

「はいはい、もう泣くな。バカ柴田。

りょうも何とか言ってやってよー」

ねぇ？と潤んだ眸で見上げてくる様も、しばゆーの世話焼きを買って出るところも、いじらしくって愛らしい。

当の昔に封じ込めたはずの感情を思い出させてくるくらいには。