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「リスナー?」
Mondoが訝しげな視線を送りながら尋ねた。
嘘をついてもバレるだろうし、何かやましいことでもあるのかと疑われても困る。
私は「はい」と力強く頷いた。
「……連れてくからホテル、教えて」
明らかにMondoの警戒心が上がっている。
でもだからといって「偶然でびっくりしちゃいました!」だとか「ストーカーじゃないですよ!?」だとか口走ると、余計に不審がられるだろう。
分かっているからこそ無言でスマホを見せた。
画面に表示されているホテルを視認したMondoは「あぁ」と声を漏らし、私にスマホを返した。
そして何も言わずに背を向けて歩き出す。
Mondoの背中が雑踏にかき消される前に、「着いてこい」っていう意味だったんだ、と気付いてダッシュで後を追う。
「……何してるの」
「いやっ、はぁっ、なんか、っは、言って、ください、よ……」
「言わなくても分かるだろぉ」
なんて横暴!
なんでだ、リスナーだと判明する前はあんなに礼儀正しく優しかったというのに。
これはMondoなりのファンサービスかな?
人が多過ぎて横に広がれないから顔を見たい欲を殺して後ろから着いていく。
「あの、Mondo……さん?」
「Mondoでいいよ」
「じゃあ、Mondo」
「なに」
「なんで配信辞めたんですか」なんて聞いていいのだろうか。
まだ親密度も足りないのに、流石に無礼過ぎやしないか。
自分のスマホで位置を確認しながら前を歩いてくれているMondoに別の質問をしてみる。
「Peluって知ってる?」
それに対してMondoは「んー」と意味の含まれていない返答をした。
「どっち? 知ってる? 知らない?」
「あれ? あ、こっちか。……え、何が?」
「だからPeluって人」
「んー……」
「Mondo聞いてないでしょ」
「静かにして。うるさいよ」
「ごめんなさい……」
Mondoはスマホに集中していて、私のことは二の次だ。
まぁ私としてもホテルに着くのが第一条件だからいっか。
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Ayaka(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品をありがとうございます。構成や感情表現が綺麗で、読んでいく度に惹き込まれます。先の展開が凄く気になって楽しみです!お身体に無理をされず、しりお様のペースで書いて頂ければと思います。これからも応援しています! (2022年3月22日 19時) (レス) id: 11c194713d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しりお | 作成日時:2022年3月10日 19時