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「うわっ、どうしたの」
「うわって何?」
「あぁいや、えっと、お仕事お疲れ様」
「なに、なんだよ。うわって何」
いつも通りの時間にロビーで待っていてくれたMondoは酷く疲れた顔をしていた。
目の下には若干隈があり、それは2日続けての仕事がどれだけ大変だったかを物語っている。
「もう、なんでもないってば。ほら、行こう」
「あ、待って」
「ん……、んん!?」
Mondoは先に歩き出した私を引き止め、振り向くや否やハグをした。
厚い胸板に片頬をくっ付けていると規則正しい心臓の音が聞こえてくる。
それと、いい匂いもする。
香水のようなキツさはない。柔軟剤だろうか。
怪我をしていない手だけを背中に回しているらしく、視界の端に宙ぶらりんになっているサポーターが見えた。
「な、何してんの!?」
周りの迷惑にならないように小声で咎めたが離してくれそうにない。
軽く手で押すけど、それより強い力で抱き締められる。
片手なのに、なんてパワーだ。
「待って。まだ」
Mondoは消え入るような声で「もうちょっと」と付け足した。
そんなこと言われたらもう何もできない。
無言でされるがままになる。
心臓が約20回脈打った後、Mondoはゆっくりと体を離した。
少し名残惜しそうに見えるのは都合のいい幻覚だろうか。
「行こ」
「あっ、う、うん」
……やっぱりいつも通りのMondoかもしれない。
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Ayaka(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品をありがとうございます。構成や感情表現が綺麗で、読んでいく度に惹き込まれます。先の展開が凄く気になって楽しみです!お身体に無理をされず、しりお様のペースで書いて頂ければと思います。これからも応援しています! (2022年3月22日 19時) (レス) id: 11c194713d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しりお | 作成日時:2022年3月10日 19時