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驚きのあまり何も言えないAを置いて、俺は話し始めた。
「配信が辛かった。ゲームもやりたくなかった」
夢から醒めて、起きて、ご飯を食べながら考える。
今日はどんな配信をしようか。
何を言えばリスナーは笑うかな。
楽しいゲームってあったっけ。
最近同じのしかやってないな。
こんな生活、いつまで続けられるのかな。
これの繰り返しで、考えることはいつも同じ。
不安だった。毎日毎日不安で不安でたまらなかった。
ストレスだった。楽しくもないゲームをやることが。
ものすごく疲れるんだ。異国語で長時間話すことは。
怖かった。いずれ見放されると知っていたからこそ。
だから逃げた。
「……そうだったんだ……」
Aは酷く落ち込んだ声で言い、次いで、「気付いてあげられなくてごめん」と謝った。
気付かなくて当然だ、だって誰にも、特にリスナーにはバレないように振舞っていたのだから。
なのに、どうしてAが謝るのか。
「ごめんって、それ、いらないよ。俺が悪いから」
そう言ったのに、Aは未だに「ううん、ごめんだよ」と謝罪して俺の話を聞こうとしない。
好きな人を怒らせて、悲しませて、心配させて、謝らせて……、こんなことになるなら辞めなければよかった。
早く復帰したい。
Aを安心させて笑顔にするには、それしかないと思う。
「A、」
俺、また配信者になるよ。
そう言おうと口を切った矢先、ポケットに入れていたスマホが着信音を鳴らした。
誰からの電話かなんて、見なくても分かった。
「……ごめん、仕事しなきゃ」
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Ayaka(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品をありがとうございます。構成や感情表現が綺麗で、読んでいく度に惹き込まれます。先の展開が凄く気になって楽しみです!お身体に無理をされず、しりお様のペースで書いて頂ければと思います。これからも応援しています! (2022年3月22日 19時) (レス) id: 11c194713d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しりお | 作成日時:2022年3月10日 19時