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13時30分。待ち望んでいた約束の時間だ。
午前中は病院へ行っていた故に1日が長く感じられる。
半袖を着たことにより丸見えになったサポーターを片手で触りながら、Aが降りてくるエレベーターを凝視する。
するとしばらく経たないうちにチン、という音が聞こえてきた。
Aを乗せたエレベーターがロビーに着いたのだ。
やばい、Aが来る。
来たら何をすればいいんだっけ。
あー、えっと、まず謝ろう。それが第一優先だ。
その後はいつも通りの会話を楽しんで、それと平常心でいること、これも大事。
他に気をつけることは……、
「Mondo!? それどうしたの!?」
その声に、いつの間にか下げていた頭を上げた。
駆け寄ってくれたらしいAは若干肩を上下に揺らしながら俺を見下ろし、黒いサポーターを指さした。
魅力的な両眼は大きく見開かれている。
俺は当初の予定通りに「ごめん」と謝った。
でも言葉だけじゃ足りない。
だから立ち上がって頭を下げ、もう一度「ごめん」と言った。
「ちょっ、顔上げてよ」
「マジでごめん」
「Mondo? 聞いてる? お願いだから顔上げてって」
「ほんと、すみませんでした」
「いやもう分かったよ!」
まずい、しつこすぎたか。
また怒られたらどうしよう、そんなことを心配しながら顔を上げると、Aは赤面して「とりあえずここから離れよう」と言い出した。
そこでようやく気付いた。
ホテルの利用者や従業員が俺達を物珍しそうに見ていることに。
「A、怒ってる?」
「怒ってないよ」
「マジ?」
「うんうん」
どうやら一分一秒でも早くホテルから去りたいらしい。
そんなこと今はどうでもいいと訴える目線と適当な返事で分かった。
「……じゃあ行こう」
「うん、そうしよっか!」
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Ayaka(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品をありがとうございます。構成や感情表現が綺麗で、読んでいく度に惹き込まれます。先の展開が凄く気になって楽しみです!お身体に無理をされず、しりお様のペースで書いて頂ければと思います。これからも応援しています! (2022年3月22日 19時) (レス) id: 11c194713d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しりお | 作成日時:2022年3月10日 19時