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私達は話に花を咲かせた。
日本と全く違った韓国の常識、Mondoの高校時代、兵役の話、MVPに所属していた頃の思い出、CRKR勢の秘密など。
どれもこれも初耳で、全ての話題に食らいつくようにして聞いた。
そんな私をMondoは「犬みたい」と笑った。失礼な人。
いつまでもこの時間が続けばいい。
しかし無情にも時間は有限で、且つ流れていくものだ。
空想にふけるだけ無駄である。
とどのつまり夜になってしまったのだ。
Mondoには仕事があるから、そろそろ帰らなければならない時分だろう。
「もう夜だけど帰る?」
ルームサービスで頼んだノンアルコールのお酒を口元から離し、机に置いた。
隣に座って同じお酒を飲んでいたMondoもグラスを置き、こう言った。
「どっちでもいいよ」
まだ俺といたいだろ?
そう言いたげな表情だ。
「……じゃあ、帰ろっか」
ここでMondoに近付いたらダメだ。
危ない橋を渡るような馬鹿じゃない。
私にだって流石に倫理観はある。
とりあえず立ち上がった。
Mondoを送らなきゃ、せめて玄関先までは。
まだソファーに座ったままのMondoに「ほら」と言って手を差し伸べる。
Mondoはその手を取り、そして何を思ったのか、突然引っ張った。
「うわっ!!!」
慌てて手をつこうとするも上手くいかず、そのままMondoに抱き着くようにして倒れてしまった。
すぐ離れようと身をよじるが、それを逆手に取られて物理的な立場が反対になる。
上から私を覗くMondoの瞳は怖いくらい欲を主張していて、私は瞬時に、「食べられる」そう思った。
恐れか、照れか、はたまた酔いか。
体がじんわりと熱くなり、背中や脇から汗が出てきた。
Mondoは呆気に取られている私の腕を自分の首に回させて、左手を背中に、右手を膝裏に滑り込ませた。
この先は、想像しなくとも分かる。
「ちょっ、ちょっとMondo!? よくないよ!?」
ついに持ち上げられてしまった。
足が宙ぶらりんになっていて、とても怖い。
慌てて止める私を無視して、「ごめん」とひと言。
悲しそう……、いや苦しそうな表情で私を見ている。
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Ayaka(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品をありがとうございます。構成や感情表現が綺麗で、読んでいく度に惹き込まれます。先の展開が凄く気になって楽しみです!お身体に無理をされず、しりお様のペースで書いて頂ければと思います。これからも応援しています! (2022年3月22日 19時) (レス) id: 11c194713d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しりお | 作成日時:2022年3月10日 19時