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事務員? Mondoが事務員やってるの?
いまいち把握できずにいる私を助けるかのようにMondoが補足をしてくれた。
「翻訳してる」と。
「配信の翻訳ってこと?」
「そうそう。動画もあるけど、手紙? あ、いや、書類かな? それもする」
翻訳……、書類……。Mondoが?
未だに現実味が湧かなくて、私は「例えばどんなことしてるの?」と質問を重ねた。
「動画は、別の事務員がクリップしたのを翻訳してぇ、難しい言葉とかスラングが分からない人を助けてあげてる」
「書類は?」
「同じ」
勧められたナムルを咀嚼したまま「ふーん」と言うと、先に食べ終えたMondoが「興味ないの?」とちょっぴり怒った風に言った。
「いや興味はめっちゃあるんだけど、なんかね、すごいなって」
「すごい?」
「うん。真面目に働いてるなぁって思った」
「ちゃんと働いてるならこんな時間に外出てご飯食べないって。しかもリスナーと」
「だからリスナーじゃなくてストリーマー。同業者……、あ」
言い終わって、はっとした。Mondoはもう違うんだった。
「同業者じゃないよ」
Mondoはスマホを触りながら声のトーンを落として言った。
CRで働いているからという理由だけでまだ繋がりを感じていた。
どこかでMondoは帰ってくると信じていた。
……そもそも韓国に来たのは未練を抹消するためではなく、その微かな可能性を強く妄信するためだったのかも。
「そうだよね、ごめん」
事務員とか同業者とか、日常会話では使わないワードを知っているくらいには離れている。
互いの住む星が違うように感じるほど、Mondoが遠くて遠くて仕方ない。
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Ayaka(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品をありがとうございます。構成や感情表現が綺麗で、読んでいく度に惹き込まれます。先の展開が凄く気になって楽しみです!お身体に無理をされず、しりお様のペースで書いて頂ければと思います。これからも応援しています! (2022年3月22日 19時) (レス) id: 11c194713d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しりお | 作成日時:2022年3月10日 19時