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現在時刻、午前二時。
目を瞑って寝たふりをし、意味もなく寝返りを打って、スマホで時間を確認することの繰り返しに陥っている。つまり寝れないのだ。原因は言わずもがな、真依さんのことである。
疲れているからなるべく体は動かしたくなかったが、こうなったら仕方ない。俺は上着を一枚羽織ってから部屋を出た。
散歩でもすれば流石に眠くなるだろう。
廊下を歩きながらどこへ行くか考える。
コンビニにでも行ってみようか。深夜のアイスを楽しむの良し、明日に支障を来すのを承知でインスタントラーメンを食べるのも良し。決して有意義な時間とは言えないが、特別感を味わえる最高の使い方だ。
屋敷の玄関を抜けると、門が一切の侵入を拒んでいるように佇んでいた。鍵が掛かっていて、正面から抜け出すことはできない。
塀伝いに屋敷を一周したが、裏口にも鍵が掛かっていた。
行き詰まった俺は、自分は一般人より身体能力が高いのだから塀くらい余裕で飛び越えられるのではと考えた。俺を待っているコンビニを想って、高さを確認しに行く。
すると、塀の上に鳥避け針が設置されているのを発見した。つまりこれを越えることは不可能なのだ。
ここまで来て引き返すのはなんだか癪で、縁側を歩くだけのコースに切り替える。
特段腹が減っていたわけではないから落ち込んだりはしないが、望みが達成されなかったことを残念に思う。
それに、ただ歩くだけというのもつまらない。かと言って、できることも見つからない。
俺はやるせない気持ちを抱えたまま、角を曲がった。
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作者名:しりお | 作成日時:2021年11月27日 20時