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気は進まないが、真依さんの所へ足を運ぶ。
挨拶や作戦会議などを済ませて試合に望むべきだ。京都校の女子達から離れたタイミングを見計らって声をかける。
「真依さん」
「……よろしくね」
しかし真依さんは素っ気ない挨拶を一方的にぶつけて、どこかへ行ってしまった。開始時間まで関わる気などさらさらないようだ。
俺の心はずしんと重くなる。もう二度とツララを浴びまいと思っていたのに、再度心臓を刺されるなんて。
きっと既に悪魔が俺の首を猥りがましく掴んでいるのだ。頸動脈に鋭利な爪を突き立てて、じわじわと肉に侵入しているのだ。
俺はその痛みすら感じることができずに、口を一文字に結んで審判の時を待つことにした。
第一、第二のチームが無事に試合を終了させ、怪我も少なく戻ってきた。
どんな地形であったか、どんな戦いをしたのか、どんな呪霊が相手だったのか、聞きたいことは山ほどあるが、口には出さない。それもルールの一つだからだ。反則行為をして負けるなんてダサいどころの話ではない。
次はいよいよ俺達の番だ。心臓は、早くフィールドに向かえと俺を急かすように脈打つ。
共に体術の練習をしていた狗巻先輩にひと言断ってからグラウンドを後にする。丁度真依さんもトレーニングを一時中断したようで、俺達は無言で森へ向かった。
今回の訓練は交流会の団体戦と一味違う。それは冥冥さんが居ないことだ。話を聞くところによると、大金を稼ぎにパリへ出張に行ったらしい。
これは、つまり、戦闘中の様子が教師陣にバレないということ。また呪霊が襲撃してきたら困るなんて騒ぎでは収まらないため、呪具で行動を把握するようだ。
ちなみにどんな呪具か、そして具体的にどんな行動を把握するのかなどは一切教えてくれなかった。
不安に駆られながらも歩く。
真依さんも俺と同様に表情が曇っていた。……片割れが相手なんだ、そりゃあそうだよな。
俺はまるで独り言のように「勝てますよ」と言った。これが真依さんに向けた慰めなのか、はたまた始まる前から逃げ腰の俺に対する鼓舞なのか、自分でも分からない。
真依さんは何も言わず、俺の三歩先を歩いた。
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作者名:しりお | 作成日時:2021年11月27日 20時