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想い人が勇を鼓して差し出した手を、どうして振り払うことができようか。
繭に包まれたような穏やかな気持ちと欲望に活気づく気持ちとが混ざり合う。
彼女は血走る俺の双眸を見て、どう思っただろうか。興醒めした様子は一切見せない。真依さんも俺と同様、興奮しているのかもしれない。
俺は何も言わずに一歩、向こうに近付いた。そして腰に手を回して、なるべく自然に抱き締める。不安になるくらい細い体躯に怯えながら段々と力を強めていく。
押し付けた体を伝って、お互いの息遣いを体感する。俺達は時間ともに火照る全身を確かめ合った。
てっきり指先だけが彼女の魅力に触れたと思っていたら、いつの間にか半身まで引きずり込まれたようで踏ん張りがきかない体になってしまった。
どんどん真依さんに心酔するのを望んで止めるわけがなく、煩悩は歯止めが利かなくなっている。
額を合わせて真依さんを見つめる。目を開けているのはこちらだけで、向こうは準備を完了しているようだ。
俺の影のせいで月明かりを奪ってしまったが、それでも真依さんは美しい。彼女の前では、所詮月も効力を持たないのだ。
これ以上待てるわけなく、俺は懸命に荒い息を殺して、淡いピンクの玉唇に情愛を押し付けた。角度を変えながら、好物にありつくように何度も何度も味わう。
真依さんの唇はとても柔らかい。体がマシュマロで構成されているとホラを吹かれても、俺は愚直に信じるだろう。
一心不乱に口付けをしていると、なんと彼女が再び仕掛けてきた。
一度、息を吸うために唇をほんの少し離した刹那、半開きになった口に真依さんの舌が滑り込んできたのだ。
二度目のお誘いとなると流石に恥ずかしさを覚えるが、用を成さないプライドを捨てることで次の段階へ踏み込めるのならば、俺は進んで醜態を晒そう。
口内に真依さんの味が充満し、目を丸くする。真依さんはうっそりと笑って俺を見ていた。やはり彼女は夢魔だ。俺の肉欲を吸い取ってしまう気なのだ。
"献身"的な行為に応えようと俺も舌を入れ、彼女に絡ませた。
後ろに回った手で優しく背中を撫でると、真依さんは体を震わせ、色香のある吐息を漏らす。
俺は生暖かい息が掛かるのにすっかり興奮し、真依さんのペースなぞお構いなしにディープキスを続けた。
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作者名:しりお | 作成日時:2021年11月27日 20時