入学早々…… ページ4
遅れてきた挙句、入学初日から同級生を乱暴に扱った五条が夜蛾から叱られるのは当然で、彼の頭には大きなたんこぶが付いている。
『コイツが遅れないように手助けしてやったんですけど。なぁ、助かったよな？』
『……結果的に。ありがとう』
『頼んでないけど、みたいな顔してんじゃねぇ』
不貞腐れる五条を置き去りに術式の発表は開始される。
初めはボブヘアーの女子生徒。女子は制服の裾をぐいっと引っ張った。
「家入硝子。術式は、反転術式」
綺麗な色白い腕にメスで軽く傷を付ける。横に入った傷口からは鮮血が流れ出ている。だが見る見るうちに傷は無くなり、どこから現れたのか分からない血が腕を伝う。
反転術式は高度な呪力操作を要する。かの五条も反転術式はまだ習得できていない。
事前に術式を知っていた夜蛾以外の三人は、目を丸くする。本当に使える人がいるのかと皆驚いているのだ。
「……夏油傑。術式は呪霊操術」
お団子ヘアーの高身長男子こと夏油傑は、右手から奇っ怪な黒い渦を出し、そこから呪霊を出した。一つ目の小さな赤い鬼が、夏油の足元に立っている。
夜蛾は特に何も言わず、「次」と五条を顎で呼んだ。
五条はだるそうに歩いて四人の前に立った。本当に遅刻してきた奴とは思えない態度に、夜蛾は眉間にシワを寄せる。
「五条悟。術式は無下限呪術」
それだけ言うと、五条は夏油に近付く。
夏油は驚いた顔をするが、にこにこと愛想のいい笑みを浮かべる五条と同じような表情をした。五条はぎこちなく笑う夏油に、左手を差し出してこう言った。
「夏油傑クン、これからよろしく」
何故このタイミングで！？
内心パニックの夏油は「よ、よろしく、五条くん」と右手を出す。そして五条の左手を握ろうとした。しかし、それは叶わない。触れられないのだ。
目を丸くした夏油は手元から視線を外し、自分より少し背の高い五条を見る。五条は嫌な笑顔で、
「ざぁんねぇん。俺には触れらんねぇよ、前髪くん♪」
と夏油を馬鹿にした。
その時、夏油のコメカミに青筋が入る。笑ってはいるが、笑っていない。
からかわれた悔しさか、前髪をいじられた苛立ちか、定かではないが、夏油が五条を敵視しているのは確かである。
さきほど召喚した呪霊とは規格外のものを出して戦闘態勢に入った。もちろん五条もやる気だ。
「おい、お前らやめろ！」
夜蛾の声を無視して二人は拳をふるった。
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作者名：しりお | 作成日時：2021年11月15日 11時
