浮遊する悪魔共よ ページ18
結婚式当日。寮には五条と彼女の二人しか居ない。家入は先に式場に向かっていて、後輩は全員任務で出払っている。
彼らは鏡の前で純白の衣装に身を包んでいる。一方は真っ白なタキシードを、もう一方はフリルがたくさん付けられているウェディングドレスを。
五条も衣装を着る必要は一切ない。しかし衣装を購入する際、彼女に「五条くんは着てくれないの？」と上目遣いで言われてしまえば購入する他に選択肢はなかった。
一つの姿見を見つめながら「綺麗だね」「似合ってる」と互いを褒めながら見蕩れていた。そうこうしている内にも式の開始時間が迫っている。
「五条くん、そろそろ……」
「そうだね、行こうか」
五条はサングラスを外して胸ポケットに掛けて、彼女を姫抱きした。そして窓から身を乗り出す。
初対面の時から変わらない大雑把な五条の行動に彼女は笑った。五条も同じように笑っていた。前まではあんなに嫌っていたというのに、人生とは不思議なものである。
五条が瞬間移動をした先は無論結婚式場だ。禪院が所有している小さな屋敷で行われる予定だった。
上空から行われない結婚のために集まってくれた人達を見る。そこには想像以上の人数が居た。しかし平塚家の姿は見えない。
「……そんな暗い顔しないの」
「でもお母さんもお父さんも居ない」
「別にいいじゃん。どうせ式挙げないんだし」
「でも……」
「だーもう！ その話は結婚式台無しにしてから！」
あからさまに落ち込んでいる彼女の気分を変えるために、五条は手始めに屋敷を壊した。人の居ない端だけを半壊させたつもりがほとんど中央まで壊してしまっている。呪術師が揃っているのだからきっと怪我人は居ない。そう信じて彼女にも破壊を促す。
「やってみなよ、楽しいよ」
「ショウコさんは……！？」
「連絡して高専に戻らせたから平気」
彼女は五条を神と認識していたが、実際は違った。五条は「今日くらい好きに暴れようぜ」と甘い言葉を囁く悪魔であった。汚れなんて一つもない服が黒く染まっていくような感覚に陥る。
堕ちたな、私も。
「……分かった。なら好きにする」
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作者名：しりお | 作成日時：2021年11月15日 11時
