一緒に生活[HIKAKIN]

難航２ ページ36

面談の時間になり、会社のブースに到着する、私の担当は女性のエージェントさんだ。
年も私より上でベテランという雰囲気が漂っている。
求職活動の現状や、改めて業種の話をしたところでエージェントから切り出された。

「Aさん、個人的なことをお伝えするのは大変申し訳無いのですが……」

「はい、なんでしょう」

いつもハキハキしゃべるエージェントさんが言いにくそうに口ごもるので、決定的に駄目な部分があるのだろうか。
不安になって先を促す。

「やはり、ご年齢が結婚や出産などで生活スタイルが変わってくるタイミングだと思うんですね」

「はい」

「キャリアはもちろん積まれてらっしゃるんですが、企業側が入社されてすぐ結婚や出産を機に辞めたり産休に入られたりするのを懸念されてるのかなと」

「ああ、なるほど……」

「もちろんそういった理由で落とすというのはあってはならないことですし、企業側からはそういったことは言われてないんですが…」

実情としてそういったこともあるのはお伝えしたほうがいいかと思いまして、とエージェントからの言葉を重く受け止める。
確かにそうかもしれないと思ったことは何度かあった、広告代理店に勤めていたときも女性は結婚を機に退職や産休入りなどで長年勤めていく人はそう多くない。
どうしても、プライベートを優先すると結果的に仕事に集中することが難しくなってくる。
前の会社は比較的女性で長年キャリアを積む人もいたが、中途採用で入ってくる社員は男性が多かったように思う。

「女性っていろいろありますもんね」

昔に比べればましなのだろうけれど、今の私にはそんなしょうもない言葉しか出てこなかった。
もちろんそれだけが理由じゃないのだろうけれど、今の沈んでいる心に更に重しをつけるには十分な材料だった。

「そうですね…、ですが今は女性の活躍する企業も多いですから一緒に頑張りましょう！」

その後、エージェントが女性も働きやすい企業を何件か紹介してくれたが、あまり頭に入ってこなかった。

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