一緒に生活[HIKAKIN]

はじまりは突然 ページ3

光に連れられて初めて訪れたカフェは、若い子が好みそうなおしゃれな内装で半個室になっていた。

「ここ、初めて来た…すごいおしゃれ」
「でしょ、YouTuber同士でご飯行くときってやっぱり個室が多くてさ、ここ結構気に入ってるんだよね」

おすすめはオムライスだよ、とメニュー表をさり気なく渡された、オムライス…おいしそうだな。
私は勧められたオムライスと食後のミルクティーを、光は日替わりパスタのボロネーゼとカフェオレを注文した。
程なくして二人の食事が揃い、いただきますと小声でつぶやいて私はオムライスを頬張った。
ふわふわのオムライスとバターの風味がするチキンライスが絶妙にマッチしていて少し感動した。

「仕事忙しくって、居酒屋とかはよく行ってたけどそれも仕事だしこんなにゆっくりお昼ご飯食べるの久しぶりかも」

平日の朝は食べたり食べなかったり、お昼も仕事をしながら簡単にすませたりしていてここ最近はゆっくりランチするなんてめったになかった。

「さっきの話なんだけどさ、仕事やめるって本当？」

「うん、残業多いとかっていうのはわかってたんだけどね…、仕事の手柄後輩に取られたみたいになっちゃって糸が切れちゃったみたい」

後輩が原因ってわけじゃなくていろいろ積み重なったんだよと、苦笑いしながら答えた。

「そっかあAが決めたんなら俺が口出すことじゃないよな…このあとどうするの？」

「うーん今住んでいるのが社宅だから引き継ぎしてる間に引っ越しかなあ、でも家探したりする時間あるかなー」

そう、実は今住んでいるのは社宅で退職したらすぐにマンションを引き払わなければならない。
しかし、引き継ぎ業務をしながら引越し準備、引越し先を決めたりなどやればできないことはないがなかなか骨が折れそうだ。
貯金もある程度はあるが、今後の仕事がいつ決まるかもわからないため不安でもあった。

「光の家に引っ越しちゃおうかなー、なんてね」

軽い冗談で言ってみた、光は今や私の手の届かない場所にいるスターみたいなものだ、動画もこっそりチェックしているし広いマンションにまるおともふこという猫と住んでいるのも知っていた。
すると、光は一旦食べるのをやめ、何かを考え始めた。

「あ、ごめん冗談だから！気にしないでね！！」

「A、うちに引っ越してしばらく住まない？」

「は？」

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