1話 始まりの夢 ページ3
「はっ……はっ……はっ……!」
走る走る走る。ただひたすらに無音の世界を走る。足音も何もしないこの世界で、上から降り注ぐ光が無情にも強く、必死になりながら汗をかいて走っていた。
そして、何かに追いかけられているみたいで全力で走って逃げていた。
何かは解らない。でも、逃げなきゃいけないから逃げていた。
私の名前は
ふと、私を追いかけていた何かの気配が消え失せ足を止める。その瞬間だった。
「い"っ……だ……!」
どすり。後ろから何かが私の背中を刺した。ゆっくりと刺された部分を見る。どろどろと出てくる真っ赤な液体にどす黒い鉄パイプみたいな槍。真っ黒くて太くて、先っぽが私のその液体によって赤黒く成っていた。……不思議と先程は痛いと口に発したが刺された後は其ほど痛くはなかった。プスリと槍がゆっくりと抜かれる。私はスッと穴の空いた腹を撫でてみる。未だにどろどろと出てくる液体が私の手を赤く汚した。
……これは、夢だ。
確実にそう思った。本来なら倒れても可笑しくない……否、確実に倒れる怪我を負ったのだ。倒れないとなると夢と断定するのが確実だった。
自分の怪我から目を放して串刺しにした本人を見るためぐるりと体を返す。
私がいた。……姿形は違ったが確実に私だ。
灰色の髪の色に高めに結わえたポニーテール。闇が深そうな真っ黒い瞳に淡いピンクの唇。血の様に真っ赤なマフラーに黒のスーツ。黒靴下に黒い革靴。ひっそりと柄の入った黒のネクタイがマフラーから覗いていた。白い手袋は私の血で汚れたのか少し赤黒く染まっていた。
そして、目の前の私は私に向かってナイフを振りかざした。キラリと光に当たって刃が光る。
ドスリ。私の心臓めがけて振り下ろしたナイフは見事に心臓にぶっ刺さる。一気に私の体温は探し始め地面に身体が崩れ落ちる。
ニタリ。
ヤツが嗤った。
そして、彼女は倒れた私の前に座り込みナイフをまた振りかざす。
グサグサグサグサ。ぐさぐさぐさぐさ。痛みを成すように静かに嗤いながら私の身体にナイフを刺していく。
嗚呼……!痛い!痛い!痛い痛い痛い痛い痛い!イタイイタイイタイイタイイタイ!いたいいたいいたい!
私は痛みで顔をしかめる。私の身体の外に私の血がどばどばと出ていくのが判る。
再びヤツの顔を観ようとした瞬間、私の意識はトンだ。
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白雪の鴉亭(プロフ) - 七夜さん» あっ!ありがとうございます!ゆっくりやっていきますので気長によろしくお願いします……! (2019年5月19日 13時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
七夜(プロフ) - 世界観がとても素敵です!応援しています、更新楽しみにしてます! (2019年5月19日 10時) (レス) id: 5d16445995 (このIDを非表示/違反報告)
白雪の鴉亭(プロフ) - さぬきさん» すみません、誤字です。間違えてました……!指摘ありがとうございます! (2019年5月10日 21時) (レス) id: 033af8111d (このIDを非表示/違反報告)
さぬき(プロフ) - 失礼します!Helloという占いツクール内の企画から来ました!番外編面白そうだったので!質問なのですが、眠り姫病はめむりひめと読むのでしょうか?ルビがそうだったのですが不自然で。 (2019年5月10日 21時) (レス) id: 640a4ce08b (このIDを非表示/違反報告)
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