葡萄酒の宵 ページ18
琥珀をとかしたような淡い金髪が夜風に揺れる。ある伯爵家一行の入場に、大広間は色めきたった。麗しい伯爵夫妻に続き入ってきたのは、次期当主とその妹。
兄の腕にエスコートされた妹は、大商会の次期当主であり、二人揃って将来有望な兄妹である。
白亜の大広間に、彼らの葡萄酒色の礼服とドレスは他の人と被りさえすれど、その美しさは一番だった。
妹の方は今回が数年ぶりの夜会の出席であり、美人姉妹の噂を知る人々はその入場を待ちわびていた。
美人姉妹の片割れである姉は、伯爵家の後に侯爵と入場してきた。姉妹は仲良さげに挨拶をすると、穏やかに談笑を始めた。
そして、それを誰よりも高いところで見守るのは＿＿＿＿。
「伯爵家の美人姉妹ってAさんの事だったのか……変な虫がっ」
想定外と言わんばかりにじっと伯爵令嬢を見つめるのは、この国の第二王子、ゼン･ウィスタリア。
「お前はあのご令嬢が気になっているのか」
「あっ、兄上」
「直々の招待状もだしたそうじゃないか」
「そこまで知って……っ」
「当たり前だろう」
面白いと言わんばかりに肩を揺らして笑うのは、兄のイザナ。顔を赤くして怒ったような顔をするゼンは、まだ幼い可愛げのある顔だが、イザナは切れ長の目を細めてからかうように笑う。あと数年もすればゼンも似るのだろう。
「彼女はこういった場で人目に触れるのを嫌がる」
「何故ですか？」
「真意は知らないが、大方婚約を避けているのだろう」
「避けて……」
わかりやすい顔をするゼンに促すように、イザナは遠くにいる令嬢に顔を向ける。ゼンもそれに合わせ、再度広間で一際存在感を放っている薔薇園を見た。
「まあ少し変わった娘だからな」
「彼女と面識があるのですか？」
「ちょっと茶会で話したくらいだ、心配するな」
「いやっ、別に俺は心配とか、そういうのではない、です……」
弟をからかえて嬉しいのか、イザナが笑っていると、楽団の演奏が始まる。
「挨拶に出る……お前もくるだろう？」
「は……っ、はい」
気を引き締めると、王子然とした面持ちに切り替わる。前をしっかりと見すえたブルーサファイアの双眸は、兄のイザナの光に似ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒髪の白雪姫 - 天泣tenkyuさん» 返信ありがとうございます♪(〃^ー^〃)もちろんです！ゆっくり大丈夫です！更新がんばって下さい！( ＾ω＾ ) (2018年2月4日 16時) (
レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» コメントをいただけてとてもうれしいです！このとおり更新は遅いですがしっかりと構想を練り完結させたいと思っておりますので最後までよろしくお願いします！ (2018年2月3日 12時) (レス) id: 6a5dbc60dc (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - 初コメです！凄くおもしろいです！更新がんばって下さい！ (2018年2月2日 17時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天泣tenkyu | 作成日時：2017年9月18日 6時
