煙草の煙／ksk ページ36
○ksk喫煙者設定
私が適当に閉めたカーテンの隙間から彼が自らの肺を真っ黒にしているのが見える。ソファーの背もたれに体を預けて、目を閉じて空気を吸い込んだ。
ちっとも煙草の匂いはしない。彼は私が副流煙とやらを吸わないようにと絶対にベランダに出て煙草を吸う。貴方の匂いで満たされたいのに、部屋に煙草の煙を残してはくれない。
只でさえ男と女の寿命には差があるというのにこれ以上離れてしまえばゴミみたいな余生を過ごす事になってしまう。１人には広い部屋で過ごすのも嫌だし、彼の声を忘れていくのも嫌だ。
私の肺だけ綺麗なままで、彼が先に逝ったとしても残されるのは綺麗な肺だけ。居なくなれば全てを忘れていくのに、彼の居た証拠を残せないのは嫌だ。
折角の彼の気遣いをゴミにして、最近買った新品のサンダルを引っ掛けて雨の降るベランダへと出る。室内より少し蒸し暑いベランダに、紫煙が泳いでいる。
扉を閉めた音に驚いて此方を向いた彼は、手元の灰皿にまだ吸い始めたばかりであろう煙草を押し付けた。まだ生きようとする赤い火が消えて弱く煙を吐き出す。
「なんで消したの、勿体無い」
「Aが居るから」
「私は貴方より先に死にたい」
「俺は嫌だ」
嫌味のように肺活量の限界まで煙を吸い込む。肺を満たしたその空気が、苦さが、彼の匂いそのもので愛しくて吐き出せない。
彼は嫌な顔をして私を部屋に押し込もうとする。いつのことだったか、彼は副流煙について細かく説明してきた。私にはそうする癖に、まだお金を払って自己加害を止めないでいる。
別に、彼の楽しみを奪おうとも思わないし。
別に、私の肺を汚したって構わないし。
貴方より先に逝ったって、構わないし。
そう言えば彼は大きく瞳を見開いて首が取れてしまいそうなくらい首を横に振り、独りになるのは嫌だと、私を部屋に押し込んでからライター片手に言う。
貴方のいない人生を過ごしたくないから、貴方が確かに吐き出した苦い煙を精一杯吸い込むのに。肺がそれで満たされて黒く染まっていくことに、満足しているというのに。
どうしても副流煙を私に吸わせたくない彼はガラスで2人の間に壁を作ってしまい、ガラス越しには煙はやってこれそうもない。
だから私は扉を開けて、貴方をきつく抱き締めた後、煙を取り逃してしまわないように彼の匂いごと吸い込むのだ。
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ねむねむね〜むね - siratama〇さん» 何度もめんどくさいコメントすみません！fjさんのお話見させてもらいました！夢主さんがずっとこの夏をループして、忘れられない感じ？がとても好みな一作でした！fjさんの一言で終わらせられたって考えると涙が出てきます(？)その他の作品の更新も頑張ってください！ (2019年8月27日 15時) (
レス) id: 94679e293b (このIDを非表示/違反報告)
siratama〇(プロフ) - ねむねむね〜むねさん» あわわ！またまたコメント有難う御座います……！そのお言葉で頑張れます。最近更新が滞っており大変申し訳ないのですが、近日中には必ず更新致します。意外な結末のエンドのお話考えておきますね！コメント本当に嬉しいです、にこにこしながら拝読しておりました。 (2019年8月25日 21時) (レス) id: 1503b2e324 (このIDを非表示/違反報告)
ねむねむね〜むね - しらたまさーん！この短編集でのしらたまさまの、魔法が解ける瞬間みたいな、意外な結末のED(？)がすごい好きです！好きなのはuszwさんのお酒強い奴です！ (2019年8月25日 19時) (レス) id: 94679e293b (このIDを非表示/違反報告)
siratama〇(プロフ) - ▼あこあこ.。さん» この度は投稿が大変遅れまして本当に申し訳ありません。これからもsiorやTOP4でのお話も執筆していく予定です。沢山のお褒めのお言葉嬉しいです、そのお言葉で頑張れます！リクエストいつでもお待ちしております。この度は本当に有難う御座いました！ (2019年6月30日 10時) (レス) id: 1503b2e324 (このIDを非表示/違反報告)
▼あこあこ.。 - しらたま様..!! リクエストさせていただいた小説を拝見させていただきました..！ もう本当に最高です..。期待以上のものでした..!! 本当にありがとうございます！ しらたま様の小説ほんと好きなのでまたリクエストさせていただきます。 (2019年6月30日 8時) (レス) id: 4f02a02f8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：siratama○ | 作成日時：2019年3月2日 18時
