【文豪ストレイドックス】最強少女、通常運転【太宰治】

喧嘩する程何とやら?-参 ページ9

「…で、結局誰が買って来て呉れるのだい?」

「Aが私の真似を…!」

「違うよ阿呆。移ったんだ、最悪な事にね」


吐き捨てる様に太宰に云い、皆を見る。


「妾(ｱﾀｼ)と賢治は一組で好いかい? 未だ金の仕組みが判っていない様でねェ」

「じゃ、後は乱歩さんと太宰と国木田君、潤ちゃんとナオミちゃんペア、各々一つで。宜しくー、潤ちゃんに云っといてね。辞退も可」


ひらひらと手を振り乍ら、自分の机に向かう。

沢山の文庫本やハードカバー等が置いて在った筈なのだが、それらはうず高く積まれた書類で見えなくなって居た。

一番上に在ったそれを捲って見てみると、何の事やらよく判らない事件の報告書が在る。何故だ。


「国木田くーん、此れ僕に回すやつじゃあ無いよね?」

「何れだ?」

「此の、『横浜市役所立て籠り事件』ってやつ」

「其れはAの分の筈だが…?」

「え、嘘。僕こんな事件知らないよ」


聞けば如何やら此れ全部が、間違いなく僕の分らしい。

遣る気の無い僕に、こんなに仕事を押し付けて如何しようと云うのか。

僕は病み上がりだぞ。


「太宰、此れ遣って呉れない?」

「えー…自分で遣りなよ」

「けーち。じゃせめて硝子直しといて」

「もう遣ったよ」

「え、嘘」


にこりと笑みを浮かべ、僕の隣＿＿太宰の自席に座り頬杖を付く。

其の儘彼は僕の手を取り、台詞を続けた。


「だから、」

「…え、厭だ。そう云う風に、幾度となく女性口説いたの知ってるよ」

「未だ何も云って無い!」


うげっと舌を出して見せると、拗ねた様にそう云う声が耳に入った。

大体云おうとした事は判るが、何が悲しくてこんな自 殺嗜好と。

口唇を尖らせて居る太宰は矢っ張り子供の様で、迚もじゃ無いが22には見えない。国木田君の方が歳上だろう、絶対。此奴は三歳程鯖読みしているに違いない。


「んじゃ、今夜のご飯太宰の奢りね。僕仕事するから……面倒くさいけど」


「はぁ」と溜め息を吐いて、相手の返答も待たずに報告書にペンを走らせる。

知らない事件が過半数を占めたが、其処は異能で何とかした。

『横浜市役所立て籠り事件』、『大手密輸業者の拠点暴き』に『電網潜士に依る情報漏洩事件』。

凡て異能に頼りきりだが、晩飯の献立を決める権限は此方に有る。此れ位で休んじゃいられない。


＿＿そして僕は、業務終了時刻迄に、何とか書類の山を片付けた。褒められた。

酒は百薬の長-壱→←喧嘩する程何とやら?-弐

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す