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居るべき場所 ページ5

「さあ、着いた」


昇降機を降りると、廊下に出た。有るのは観葉植物位だが、其れも含めて心地好い。

濃い赤茶の扉に、簡素な額。

≪武装探偵社≫と書かれた其れを、太宰がゆっくりと開ける。

緊張する。

早鐘の様に鳴る心臓が、迚も煩い。


「ただい」

「何処をふらふら遊んで居ったこの唐変木が!!」


「ただいま」さえ云わせず、そんな怒号が飛んできた。

一つ結びの、眼鏡の男。矢っ張り、見た事が有る。

太宰の後ろからじっと目を見詰め、情報を得た。

国木田独歩、22歳。異能名は独歩吟客。

其れだけ判れば十分だ、と太宰の後ろに引っ込む。

人混みが嫌い。怖い。大通りなんかの、ああ云う人混みは大丈夫だ。主人公が、僕じゃないから。僕には誰も目を留めないから。

然し此処に居ると、そうも行かない。主人公が僕じゃないのは変わりないのだが、見付かれば皆の注目を浴びるだろう。


「否ね、ちょっと色々あったのだよ」

「お前の色々は自 殺未遂だろうが」

「ご名答! でも今回は違うのだよねぇ」

「はぁ?」


太宰が僕の後ろに回り、僕を前へ押し出す。皆の視線が突き刺さって、怖い。帰りたい。


「……お前、真逆」

「そう、その真逆なのだよ。Aを、見付けてきた」


僕を除け者に、とんとん拍子に話が進む。如何やら、此処は矢張り僕の記憶に関係が有るらしい。

皆が吃驚した表情で、僕を見る。その時、お菓子の山が音を立てて崩れた。


「Aが如何したって?」


如何にも探偵、と云う格好の男が此方を見る。細かった目と、口を開けてガタンっと立ち上がった。

僕が此処に居る事がそんなに可笑しいのだろうか。

不安に成っていたその時、わっと皆が集まってきた。


「A! 半年も何処行ってたんだい!」

「Aさんが帰って来てくれて嬉しいです!」

「え、否、あの」


蝶の髪飾りの女性、麦藁帽の少年。少年――与謝野さんと賢治君が口を開く。

先程立ち上がった男――乱歩さんも、僕に近付いた。


「A、僕を放っておいて何処行ってたの? 早く作ってよ、お菓子」


口を尖らせて拗ねた様に彼は云う。僕はそんな事をしていたのか。

太宰に助けを求めると、思った通り喉を鳴らしていた。


「お菓子なんて作れませんよ、僕は。太宰さんにでも頼んでください」

「太宰が出来る訳無いじゃないか!」

「太宰さん出来ないんですか」

「そうだよ! 何時もAに作って貰っていたからね」

「嘘吐け」

「反応の差!!」

ただいま。→←捨てる神あれば拾う神あり-弐



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konoha(プロフ) - UN3245さん» 返信遅れてすみません…!改めて参加して下さりありがとうございます!見に来ました〜!これからも更新頑張って下さい!応援しています! (2016年5月24日 18時) (レス) id: 48215daa06 (このIDを非表示/違反報告)
UN3245(プロフ) - konohaさん» あああああごめんなさい…!!私もよく分からないのですが、URLってコピペじゃ駄目なんですかね…?(返信遅れて仕舞い済みません! (2016年5月23日 18時) (レス) id: fcb678c61b (このIDを非表示/違反報告)
konoha(プロフ) - UN3245さん» 本当に何度もすみませんが、私の所にイベント参加とも通知が来ていないので、もしかしたらUSBの何処かを間違えているかもしれません(私も初めて使ったのでよく分かりませんが;;)お手数掛けますがもう一度イベント確認お願いします!;; (2016年5月20日 17時) (レス) id: 48215daa06 (このIDを非表示/違反報告)
UN3245(プロフ) - konohaさん» あわわ、すみません!!もう一度申請してきます…! (2016年5月20日 11時) (レス) id: f0f77c2065 (このIDを非表示/違反報告)
konoha(プロフ) - ここで合っていますよね…?申請されていなかったので申し訳ないですがもう一回お願いします! (2016年5月18日 17時) (レス) id: 48215daa06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:UN3245 | 作成日時:2016年5月10日 12時

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