或る爆弾ー漆 ページ36
「やれやれ…莫迦とは思っていたがこれほどとは。Aは何をしている」
「自 殺愛好家の才能があるね、彼は。Aは惚けちゃったのかな」
何時まで経っても僕等の意識は吹き飛ばなかった。
はぁ、と溜め息を吐く国木田君に、その横で笑う太宰。
……そうか。そう云う事か。
入社試験か。騙された。いや、寝起きだったのだよ。
慌てて姿を人間に戻し、太宰から白衣を受け取って羽織る。
その儘太宰達の側に立った。
「五月蝿いなあ、寝起きだったのだよ。昨日会議して呑んで大変だったのだから、忘れ様が無いだろ」
「へ? ………………え?」
不機嫌そうに頬を膨らませて云った。
実際僕は今、腹が立っている。
あれほど__遮られたとは云え、着いたら起こせと云っておいたのに。
「ああーん、兄様ぁ! 大丈夫でしたかぁぁ!? A姉様も、行成被さるから何事かと思いましたのよ!?」
「痛だっ!?」
「ナオちゃん御免よー…って引き摺り過ぎ! その話はもうお仕舞いだから!」
敦君の後ろから、ヒュッと風を切って長い黒髪を靡かせた、左目の泣き黒子が印象的な――学生には見えない艶やかさを持つ、アルバイトの事務員さん――ナオちゃんが或る人物に抱き着いた。
抱き着かれて悲鳴を上げたのは、今回の入社試験で犯人役を見事遣って退けた、気弱そうな垂れ目に大き目の服の青年(可愛い)――主に潜入や調査を行う頼れる異能者――潤ちゃんだった。
ゴキッと厭な音がして、多分潤ちゃんの肋骨が折れた。
「いい痛い、痛いよナオミ折れる折れる、って云うか折れたァ!」
ギャー、と叫ぶ。あら、と上品に口元に手を添えたナオちゃんは、今度は僕に飛び付いて来た。
酒と煙草の臭いしかしない様な僕は、何故か懐かれている。
「姉様は大丈夫でしたかぁ!? 私もう心配で心配で…」
「うん大丈夫、大丈夫だから僕より潤ちゃんの心配してあげて折れてるから」
「了解ですわ! 兄様ぁぁ!」
「ぐふっ」
御免、と内心で断ってから敦君を見た。あんぐりと口を開け、何が何だか理解できていない様だ。
その時、「その通りだ」とよく通る声が響いた。
「社長」と国木田君が云って姿勢を正す。僕は長椅子に寝そべっていたので、社長に黙礼だけして又た寝そべった。
「そこの太宰めが『有能なる若者が居る』と云うゆえ、その魂の真贋試させてもらった」
「あー、暇だなあ暇暇。ん、あれ灰皿ない?」
「未成年者の前で喫煙するな。暇なら溜まっている仕事を片付けろ」
「社長に怒られるまで溜める主義なのだよ」
「そんな主義捨てて仕舞え」
「厭だ!」
153人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
konoha(プロフ) - UN3245さん» 返信遅れてすみません…!改めて参加して下さりありがとうございます!見に来ました〜!これからも更新頑張って下さい!応援しています! (2016年5月24日 18時) (レス) id: 48215daa06 (このIDを非表示/違反報告)
UN3245(プロフ) - konohaさん» あああああごめんなさい…!!私もよく分からないのですが、URLってコピペじゃ駄目なんですかね…?(返信遅れて仕舞い済みません! (2016年5月23日 18時) (レス) id: fcb678c61b (このIDを非表示/違反報告)
konoha(プロフ) - UN3245さん» 本当に何度もすみませんが、私の所にイベント参加とも通知が来ていないので、もしかしたらUSBの何処かを間違えているかもしれません(私も初めて使ったのでよく分かりませんが;;)お手数掛けますがもう一度イベント確認お願いします!;; (2016年5月20日 17時) (レス) id: 48215daa06 (このIDを非表示/違反報告)
UN3245(プロフ) - konohaさん» あわわ、すみません!!もう一度申請してきます…! (2016年5月20日 11時) (レス) id: f0f77c2065 (このIDを非表示/違反報告)
konoha(プロフ) - ここで合っていますよね…?申請されていなかったので申し訳ないですがもう一回お願いします! (2016年5月18日 17時) (レス) id: 48215daa06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:UN3245 | 作成日時:2016年5月10日 12時