【文豪ストレイドックス】最強少女、通常運転【太宰治】

幕間 ページ29

太宰の爆弾発言から、慌てて閉店間近の、大型ショッピングモールに皆で飛び込む羽目に為った。

其処で敦君の服を購い、それから会議をして、入社試験について議論した。

中々進まなかったが、幸い僕は特に面倒な役も割り振られずに済んだ。

する事と云えば、太宰と国木田君と一緒に付いて回る位である。気楽なものだ。


ふらふらと夜道を歩いている。

夜は更けていて人もまばらだったが、店の灯りは点いている処が多い。

少し飲んで行こうか、と頭をよぎるが、慌てて横に首を振った。

又た二日酔いにでもなったりしたら、入社試験どころではない。


そんな事を考えて居ると寮に着き、僕の部屋の前に立つ。

郵便受けに隠してあった鍵を取る。差し込んで回し、取っ手を捻る。開かない。

もう一度、今度は反対に鍵を回して捻る。開いた。

鍵、閉め忘れてたのか。


「…ただいま」


返事なんてある訳が無いが、そう呟く。

帰り際に、預けてあった紙袋を国木田君から受け取った。

例の服が入っている紙袋だ。

手に提げていたそれを部屋の隅に置いた、その時。


「おかえり」


そう、声が聞こえた。

誰だ不法侵入者は。

＿＿そんなような奴は、一人しか知らないが。


「はい、不法侵入罪で起訴します」

「ええっ、非道いよA。私が入って来たのは一度や二度じゃあないって云うのに」

「それは勝手に入って来ただけだろう? ん?」

「…仰る通りです」


畳に正座させ、説教を垂れる。

はぁ、と大きく溜め息を吐くと頭を抱えた。

口に手を当てて何度か咳き込むと、手には血がこびりついていた。

洗面所に走る。激しく咳き込み、同時に血を吐いた。

今日は三回しか異能を使っていない＿＿三回迄しか使えない＿＿筈なのに。

血が止まった頃に鏡を見ると、僕は疲弊しきった表情をしていた。

今日はもう寝た方が善いだろう。

又た咳き込むと、先刻寄り酷く血の量が増えていた。頭がくらくらする。

口の端から垂れる血を手の甲で拭うと、くるりと後ろを向いた。

ぼふっ、と音がした。

その儘抱き締められた。

意味が判らず、状況が飲み込めずに居ると頭を撫でられた。

思わず泣きそうに為った。

此奴の前で泣いて為るものか、と堪えた。


「……太宰」

「ん」

「………又た河入った?」

「……判った?」

「一寸だけ生臭い」

「乾いてから来たのだけど」


又た大きく溜め息を吐く。

抱き締められたのは＿＿あれだ、屹度子供扱いでもしているんだ。

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