人生万事塞翁が虎-捌 ページ21
「い、いや、ほんっとーに助かりました! 孤児院を追い出され横浜に出てきてから、食べるものも寝るところもなく。……あわや斃死かと」
「ふうん、君施設の出かい」
「出というか…追い出されたのです。経営不振だとか事業縮小だとかで」
へらりと笑い乍ら敦君は云う。こんな話、笑って話す他ないのだろう。
僕はそれを隣の席で眺めた儘、かき氷の器を空にする。一気に食べ過ぎた所為か病の所為か、頭や鼻筋の辺りがキーンとした。恐らくは両方だろうけど。
「それは薄情な施設もあったものだね」
「敦君も大変なのだねえ。あ、おばちゃんかき氷お代わりー」
「未だ食う気か」
「奢りですから!」
近く迄注文を取りに来ていたおばちゃんに手を掲げてそう云うと、「あいよ」と微笑んだ。
そして国木田君の問いにドヤ顔で返す。手帳――基、理想を構えられた。嗚呼怖い。
国木田君は深く溜め息を吐いてから続ける。
「俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない、仕事に戻るぞ」
「未だかき氷が来てないでしょうが!」
「えっと、お三方は……何の仕事を?」
「なーんだーろね〜」
そう云って僕が頬を机に擦り付けて溜め息を吐いて居ると、かき氷がやって来た。
「待ってました!」と小さく叫んで、冷たいそれを宛らお茶漬けの様に掻き込む。
「Aは黙ってろ、ややこしくなる」
「えー」
又た手帳を見乍ら云われる。何時も何時も国木田君は僕の邪魔ばかりするなあ、と考えていたら睨まれた。何ですか超能力者ですか、いや違う異能者だった。
「…それで、何の仕事を?」
「なァに……探偵さ」
仕切り直す様に敦君が云い、太宰がやけに恰好付けた顔で答えた。それをぽかんと――「何だ此の人」と遠巻きに見る様な目で見てきたので、国木田君が舌打ちを漏らす。僕はかき氷を空にした。そして頭痛。
「探偵と云っても猫探しや不貞調査ではない、斬った張ったの荒事が領分だ。異能力集団『武装探偵社』を知らんか?」
「『武装探偵社』ってあの――社員の多くが異能者と云う、薄暮の武装集団ですか」
「え何、僕たちそんな風に呼ばれてるの? うわあ恰好好い」
机に頬杖を衝いて、頸を左右に振り乍ら云った。恰好好いなあ、薄暮って何だろう。
「あ。あの鴨居頑丈そうだね……たとえるなら、人間一人の体重に耐えられそうな位」
「立ち寄った茶屋で首吊りの算段をするな」
「違うよ国木田君、健康に善いんだよ。ねえ太宰?」
「何っ」
「嘘だけどね」
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konoha(プロフ) - UN3245さん» 返信遅れてすみません…!改めて参加して下さりありがとうございます!見に来ました〜!これからも更新頑張って下さい!応援しています! (2016年5月24日 18時) (レス) id: 48215daa06 (このIDを非表示/違反報告)
UN3245(プロフ) - konohaさん» あああああごめんなさい…!!私もよく分からないのですが、URLってコピペじゃ駄目なんですかね…?(返信遅れて仕舞い済みません! (2016年5月23日 18時) (レス) id: fcb678c61b (このIDを非表示/違反報告)
konoha(プロフ) - UN3245さん» 本当に何度もすみませんが、私の所にイベント参加とも通知が来ていないので、もしかしたらUSBの何処かを間違えているかもしれません(私も初めて使ったのでよく分かりませんが;;)お手数掛けますがもう一度イベント確認お願いします!;; (2016年5月20日 17時) (レス) id: 48215daa06 (このIDを非表示/違反報告)
UN3245(プロフ) - konohaさん» あわわ、すみません!!もう一度申請してきます…! (2016年5月20日 11時) (レス) id: f0f77c2065 (このIDを非表示/違反報告)
konoha(プロフ) - ここで合っていますよね…?申請されていなかったので申し訳ないですがもう一回お願いします! (2016年5月18日 17時) (レス) id: 48215daa06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:UN3245 | 作成日時:2016年5月10日 12時