【文豪ストレイドックス】最強少女、通常運転【太宰治】

人生万事塞翁が虎-肆 ページ16

そう云えばずっと、何か隠して居たなぁなんて思い乍ら。受け取った紙袋を開くと、黒いYシャツが入っていた。その上には白いネクタイ。

「おー」と感嘆の声を上げ、誰が購ったのかと思考を巡らせてみる。

単純に考えて、国木田君はYシャツだろう。と成ると、ネクタイが…与謝野先生と賢治君…?

其の下を漁って見ると、何故か白衣が在った。然も、大きい寸法(ｻｲｽﾞ)の。誰だ。


「太宰、白衣は好きかい?」

「え? 私白衣なんて購って無いよ」

「……乱歩さんか」


白衣にしろ何にしろ、寸法間違ってませんか乱歩さん。

後は靴が在れば好いなー、と白衣の下を見ると、スカァトが入って居た。襞(ﾌﾘﾙ)付きの。

太宰殺す。


「だーざーいーくーん。如何してスカァトなんか入れたのかなぁ?」


にこにこと笑い乍ら云うと、逃げられた。

透かさず追い掛けて、砂色のコートの裾を掴まえる。


「に、似合うと思って…」

「せめて其処はズボンで我慢しろよ!」

「ご免なさい!!」


後日、カーキ色のズボンと取り替えて貰いました。今度着ます。



*



「じゃ、太宰は此方。僕一寸コンビニ寄ってくから」


夕暮れ。手を振って一旦別れ、コンビニに入る。

駆け足でアイスコーナーに向かい、カップのバニラアイスを手に取った。レジに向かう途中、プリンが目に留まった。じっと凝視した後其れを二つ取り、会計を済ませて外へ出た。

川の堤防の上を歩いていると、斃れている少年を見付けた。名は中島敦、18歳。異能名――『月下獣』?

今にも斃死しそうな彼の少年も、能力者か。月下獣と云うことは獣と月に関係が有るのだろう。虎についても、何か判るかも知れない。


「やあ少年。お困りかい?」


川縁迄降りて行き、伏す少年にそう声を掛けた。すると少年は、僕の持つレジ袋が擦れる音に誘われた様に立ち上がった。


「は…はい、実は空腹で…」

「そうかい。食べなよ、プリンしか無いけれど」

「…っ、有難う御座います!」


そう云ってプリンとスプーンを渡すと、彼は凄い勢いで食べ始めた。余程空腹だったのだろう。
僕は其の隣に座ってアイスを食べる。冷たい其れを流し込む様に、一気に食べ終えた。


「その…本当に有り難う御座いました。何かお礼を…」

「あぁ、善いよ善いよ。偶々プリン持ってただけだし」


けらけらと笑い、何度も頭を下げる少年＿＿敦君を止めた。

そして他愛ないお喋りに花を咲かせていると、何かが流れてきた。

…見慣れたコートなんて見ていないぞ。

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