第６話 two kings ページ7
第６話
「おはようございます」
と、ドアをくぐって声をかけた。
すると珍しく、バーの中はひとけがない。
Aはしばらくドアの前に立っていたが、帰るのもなんだと思い、一歩、歩を進めた。
「今日は早いんだな」
いきなり声がして、Aは一歩踏み出した体勢のまま固まった。
「み、ことさん……いたんですか」
背を向けているソファから、靴が見える。
ソファへ歩を進めると、足を投げ出し目を閉じて横になっている周防がいた。
周防と２人だなんて滅多にないことで、どうすればいいかわからない。
Aはとりあえず、周防の顔が窺がえるソファの背もたれ側に立ったままにすることにした。
「他の人はどうしたんですか」
艶のあるカウンターを見つめながら言ってみた。
「さあな」
『さあな』って……、と心の中で呟き、「そうですか」と返事をしておいた。
それっきり会話は続かなくて、少々気まずい空気が流れる。もっとも、周防はそんなことは少しも思っていないのかもしれないが。
次第に空気が重みを増してくるような気がして、Aは口を開きかけた。
途端、タンマツが震えた。
少し戸惑ってから、ポケットのタンマツを取り出した。
『げ、』と思わず声が出そうになった。
ソファに視線を向けると、周防が目を開けてこっちを見ている。
出ないのも変だよな、と内心で思い、震え続けるタンマツを恐る恐るタップした。
「……なんですか」
そう言うと同時に、自然な感じで周防に背を向ける。
『どうも、宗像です』
低くよく通る声が耳に響く。
「それはわかってますから、要件は？」
そう言ってから、要件なんて聞かずに切ればよかったと後悔する。
ふ、と微笑むような声が聞こえた。
『そこに、周防でもいますか』
顔を見ていないのに、今宗像がどんな表情なのか、分かりきってしまう。
「わかってるんなら、切りま……」
言い終わらないうちに、タンマツが手からすり抜かれる。
「よお、宗像」
後ろを見上げれば、周防の手にタンマツが。
『これはこれは、《赤の王》が直々に電話に出てくれるとは』
宗像の声が、まるでAにも届くようにしているみたいに、はっきりと聞こえる。
はっ、と周防が笑った。
『しかしながら、クランズマンの私事にまで干渉するのは、プライバシーの侵害ではないですか？』
「てめぇこそ、よそのクランズマンに干渉するのは、よくねぇんじゃねぇの」
周防が口角を上げて、鼻で笑った。
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愛加那(プロフ) - 前作も読みました！凄い気になってたんですけど、何で俺っ娘なんですか？ (2016年10月31日 13時) (
レス) id: ca2f36dce2 (このIDを非表示/違反報告)
蘭花(プロフ) - 更新、待ってました！これからも頑張って下さい。寒くなってきたのでお体にもお気をつけください。 (2014年11月20日 19時) (レス) id: 1a959382f2 (このIDを非表示/違反報告)
夏みかん - 続きが気になるぅぅぅ！更新楽しみにしてますね！ (2014年8月12日 1時) (レス) id: 5a67f2bcc0 (このIDを非表示/違反報告)
Rinatin - 夕凪さんの作品大好きです！これからも更新頑張ってください！！ (2014年8月4日 8時) (レス) id: c3c23d5867 (このIDを非表示/違反報告)
桃瀬(プロフ) - 夕凪さんの作品全て好きです！これからも頑張ってください！ (2014年4月27日 16時) (レス) id: 2625b7962c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夕凪
| 作成日時：2014年3月29日 17時
